日本のエースが、存在感を世界に示した。チームトップで今大会5トライのWTB松島幸太朗(26=サントリー)はトライこそ奪えなかったが、攻守で輝きを見せた。

プレッシャーを背負いながら戦った全5試合。今後は海外挑戦を視野に入れるなど、2度目の大舞台で世界を相手に確かな手応えをつかんだ。

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南アフリカの高い壁に屈しなかった。身長の低さを狙われて、何度もハイボールを蹴られた。しかし松島は、ことごとくキャッチ。競り合いになっても、驚異のボディーバランスで耐え抜いた。勝機を見いだすためにカウンターアタックを仕掛けたが、簡単には突破できず。快足をマークされた80分。「やっと終わったという、プレッシャーから解放された気持ちがある。もうちょっとやりたい気持ちもあったけど」と思いを吐露した。

2度目のW杯で、その名を世界にアピールした。初戦のロシア戦で3トライと爆発し、第3戦サモア戦ではW杯通算5トライ目を決めて日本の最多記録を更新。最終戦のスコットランド戦も含め、1次リーグ4試合で5トライと大車輪の活躍だった。南アフリカのディフェンスを崩しきることはできなかったが「成長した部分は相手のモメンタム(勢い)を消すこと。前回大会に比べて自分の持ち味を出すことができた」。

世界の壁を何度も突破し、初の8強入りに貢献した。「自分の自信になったし、これからの代表にとってもいい経験になったと思う。今のスタンダードをしっかり保っていきたい」と、さらなる成長を誓った。

W杯を終えたが、視線はすでに世界に向いている。「海外のチームからいい話があれば、柔軟に考えていきたい。いろいろな国の文化や考え方を学べるのはいいこと」。大会前から視野に入れていた、欧州挑戦への気持ちがさらに強まった。世界的WTBへと成り上がった日本の至宝が、30歳で迎える大舞台でさらに世界を驚かす存在になる。【佐々木隆史】