<都市対抗野球>◇28日◇3回戦◇東京ドーム

 主砲のサヨナラ弾で、ヤマハ(浜松市)が3年ぶりにベスト8進出を果たした。1-1の9回裏1死から4番佐藤二朗(つぎお)二塁手(28)が、左翼へこの日2本目のソロアーチ。ヤクルト在籍経験もあるブラジル生まれの日系3世の活躍でホンダ鈴鹿(鈴鹿市)に2-1で競り勝ち、4安打無四球完投の岡本洋介投手(23)に都市対抗初勝利を贈った。30日の準々決勝第2試合(午後0時20分)で日産自動車(横須賀市)と対戦する。

 打球の行方を見て、1本指を突き上げた。本塁手前では思わず、ヘルメットを高々と投げ飛ばした。歓喜の輪の中で、もみくちゃにされた佐藤の笑顔が光った。カウント1-0から「狙っていた」(佐藤)フォークをレフトへはじき飛ばす劇的な一撃。「サヨナラ本塁打は日本に来てから初めて。打った瞬間に入ると思った」。興奮で赤らんだ顔で、まくしたてた。

 苦しい試合で、主砲の意地を見せた。先頭で迎えた2回には、高めの直球を左翼スタンドへ放り込んだ。ヤマハの安打はわずか5本で、そのうちの2本が4番の本塁打。「毎年、ドームで打てず、今年こそ結果を出したかった。今日は皇太子も見に来られていて楽しみだった。そんな試合で打ててうれしい」。高柳信英監督(56)も「見事に打ってくれたね」とたたえた。

 ブラジル生まれの日系3世で、来日11年目になる。入団したヤクルトでは1軍に上がれず戦力外。次のシダックスでは解散も経験した。だが、それでも腐らなかったのは、球界初のブラジル選手としての意地と誇り。この日、ヤマハは浜松市内のブラジル人学校から約100人の子どもらを招待していた。「今日の試合を見て、誰かが野球をやってくれたらいいな」。風邪で来られなかった2歳の長男塁唯(るい)くんのためにもつながる勝利。「次も勝つぞ!」と高らかに呼びかけた。【今村健人】