<南東北大学野球:東日本国際大5-2福島大>◇22日◇最終週初日◇楽天イーグルスグリーンパーク本宮

 東日本国際大(福島・いわき市)が福島大(福島市)を破り、2年ぶり6度目の全日本大学野球選手権出場を決めた。オープン戦わずか1勝というどん底状態から頂点到達の裏には、加賀俊幸主将(4年・宮城水産)を中心とした「ノミニケーション」があった。

 2年ぶりの神宮切符をつかむと、東日本国際大ナインに大輪の笑顔が咲いた。マウンド横で抱き合い、天高く人さし指を突き上げ、「頂点」に立った喜びを爆発させた。福島大との1敗同士の“優勝決定戦”は、初回にミスから先制を許す苦しい展開。だが焦りはない。その裏、死球をはさんでの3連打で3点をもぎ取り、あっさり逆転する。1点差に詰め寄られた直後の5回裏も2点を奪い、反撃の芽を早々につみ取った。

 「負けたら終わりだ」。試合前、仁藤雅之監督(30)にハッパを掛けられた選手たちは、頂上決戦で最高の結果を残した。加賀主将は「苦労したし、余計にうれしい」と涙を浮かべた。

 「南東北の盟主」も、09年は聖地神宮に行けなかった。昨秋、主将に就任した加賀は人一倍、王者奪還に闘志を燃やした。自分を押し殺してでも、チームが最優先-。思いの強さから、守備練習で消極的なプレーをした選手に「やる気がないならやるな」と厳しい言葉をかけた。練習を止めてまで、げきを飛ばしたこともあった。「加賀流」は理解されるまで時間がかかった。統率できているように見えても心はバラバラ。いざという場面でミスにつながり、勝ちを落とした。負の連鎖は続く。今春のオープン戦は約20戦してわずか1勝。勝てない。「自分のせいか」と悩む加賀に声をかけたのが同級生だった。

 リーグ開幕直前の4月上旬。4年生だけで飲み会を開いた。野球談議やたわいもない会話の中、誰かがつぶやいた。「おれらにうち解けて来いよ」。その一言で吹っ切れた。「今までは『主将だから自分1人が嫌われ役になればいい』と思っていた。だから相談しなかった」。抱え込んだ思いを打ち明けると、スッキリした。仲間も主将の気持ちを理解した。最上級生でもベンチ入りは4人。若いチームを縁の下で支えることを誓った。「飲みニケーション」でチームが息を吹き返した。うみを出し切り本来の強さを取り戻した。

 次は全国の強豪が相手だ。2年ぶりの聖地に乗り込む。「1戦1戦挑戦するだけ」。加賀の下、1つになった東日本国際大が神宮で暴れる。【湯浅知彦】