<東都大学野球:中大2-2青学大>◇第1週2日目◇5日◇神宮

 今秋ドラフトの目玉右腕、中大・沢村拓一投手(4年=佐野日大)が、自己最速タイの157キロをマークした。青学大戦の5回2死二塁から登板し、6回1/3を5安打1失点と好投した。7月下旬に左脇腹肉離れに見舞われたが、復調を印象づけた。右ひじ痛で離脱していたドラフト候補右腕の山崎雄飛投手(4年=芝浦工大高)も約5カ月ぶりの実戦登板で3回を無失点に抑えた。試合は延長15回で引き分けた。

 たった1球で、球場の雰囲気を変えた。5回2死二塁、沢村が、ブルペンからゆっくりとマウンドへ向かった。初球、いきなり154キロを計測し、スタンドはどよめく。そしてカウント2-1からの4球目。自己最速タイの157キロ外角直球で、3番木野を空振り三振に仕留めた。「マウンドに上がった以上、最後まで投げ抜こうと思った」。これが反撃の呼び水となり、5回まで1安打だった打線は7、8回に1点ずつ奪って引き分けに持ち込んだ。

 7月25日、大学日本代表のオープン戦で左脇腹を肉離れ。北海道キャンプには帯同しなかった。例年、夏場は体重が2キロ落ちるが、トレーニングと焼き肉、馬刺しなどでタンパク質を積極的に摂取し、ベストの90キロをキープした。この日は、負傷後最多の6回1/3、97球を投じ、150キロ超えを連発した。患部を気にするしぐさも見られたが「(内容は)納得いく状態じゃない。正直、筋肉が離れるんじゃないかという怖さは少なからずあった。でも、離れなかった。それはプラスだと思う」と話した。

 当初は1、2イニング限定で登板するはずだった。だが、4日の初戦を落とし、大学創立125周年のメモリアルVに向け、負けられない一戦。高橋善正監督(66)は「1点負けてたけど、アイツだったら追いつくと思った」と、100球をめどに、苦渋の思いでロングリリーフさせた理由を明かした。4日の試合後には「壊れて、ドラ1でプロ入りできなくてもいいのか」と、復帰を焦るエースを諭した。プロ出身の恩師からの言葉に沢村は「死ぬまで後悔するからと言ってくれた。監督さんに会えてここまでこられた。監督に従いたい」。1敗1分けと落とせない状況は変わらない。高橋監督は「明日は明日の風が吹く」と笑いながらも、6日の第3戦で今リーグ初勝利を目指す。【今井恵太】