「主将福留」の誕生は、近年の阪神の窮状を如実に表している。インターネットを見ると虎党は「楽しみ!」とか「安心」とか「適任」とか期待感あふれる肯定的な声が多い。確かにグラウンドでの立ち居振る舞いを見れば、うなずける。

 今季も甲子園でのホームゲーム時は午前10時過ぎから誰もいない球場を黙々と走っていた。野球に対する姿勢だけではなく後輩への接し方もリーダーそのもの。6月に中谷がサヨナラ失策を犯すと、すぐに近寄り「誰にでもミスはある。これでプレーが小さくなったらダメ」と励ました。8月にはベースカバーに遅れた藤浪を叱った。筋が通り、是々非々でモノを言い、トップのあるべき姿だろう。

 実績も申し分なく、グイグイとチームを引っ張ってほしい。その一方で、誤解を恐れずに言えば「主将福留」はふさわしくないとも感じる。来季40歳のベテランに託さざるを得ない現実を思うからだ。今季のセ・リーグ他球団のキャプテンを見る。広島小窪31歳、巨人坂本28歳、DeNA筒香25歳、中日平田28歳。西武も、来季は26歳の浅村が就く。いずれも、野球選手として脂が乗った人たちだ。

 前任者の鳥谷からバトンを受けた福留は「もう1度(鳥谷に)キャプテンをつけてほしい。トリから、若い選手にキャプテンが渡ってほしい」とも言った。幸いにも、24歳原口や23歳高山ら次代を担う若者も出てきた。主力の空洞化が消えたとき、阪神は再び強くなると思う。【阪神担当=酒井俊作】