残念な気持ちになった。

 8月7日の巨人戦(東京ドーム)。阪神打線が巨人先発内海を打ち込み、5回途中でKOした。すると交代を告げられて小走りでベンチへと戻る内海に、左翼スタンドから「さよなら、さよなら内海」というコールが起きた。その後は蛍の光の大合唱。しばらく球場に響いたが2番手田原の登場曲にかき消され、正直ほっとした。

 確かに内海は阪神にとって天敵中の天敵だった。試合前まで今季2戦2敗。通算27勝を挙げられていた。苦汁をなめてきた左腕だけに、KOした喜びは大きかった。ただ、だからこそ。打った阪神打線を目いっぱいたたえてほしかった。相手をけなせば、その価値も落ちてしまう。まして夏休み期間で、子どもたちが多く来場している。いまだになくならない「くたばれ」の言葉も“ギャグ”の範囲を超えていると個人的には感じてしまう。

 今季は甲子園のビジョンにOBの桧山進次郎氏が登場し「子どもに聞かせられないヤジとかはね。例えばくたばれとか。すべての選手に愛のある声援を」と伝えている。

 どこからが許されないラインか、というのは個人差によるところも大きいし、心ないヤジは阪神に限った話ではない。リスペクトを持てとは言わないし、お金を払って見に来ている以上、ある程度の権利はあると思う。しかし野球人気の低下が叫ばれる今こそ、大声を応援のためだけに使ってほしいと思う。【阪神担当 池本泰尚】