DeNA戦に先発した馬場皐輔(2018年8月12日撮影)
DeNA戦に先発した馬場皐輔(2018年8月12日撮影)

 同一リーグ公式戦のデビュー。かたちは違え、私も初登板は体験した。楽しみと不安が入り交じる。ファンの前で胸を張って優越感に浸る自分。期待を裏切り、ファンに顔向けできない自分がいる。

 現在、その境地に立っているのが阪神ドラフト1位馬場皐輔投手である。8月7日、鳴尾浜球場で行われたオリックス戦(ウエスタン)は桧(ひのき)舞台をにらんだ登板だった。3イニング限定というから1軍のマウンドに上がるのは間違いない。交流戦で一度は経験しているが、今後ペナントレースでしのぎを削る相手チームと対戦するのは初めて。

 調整登板の結果を見て判断すると、大手を振って1軍に合流する内容ではなかった。3回3安打3三振、与四死球2、失点、自責点0。得点は与えなかったが、矢野監督の話が全てを物語っている。「あれじゃあ、しんどいと思うね。今日の3イニングではねえ。あの内容なら1軍だったら初回につぶされていますよ。もっと初めから100%の力を出していかないと。上で投げるか、投げないかの判断は僕が決めるわけではありませんから」である。1軍マウンドに疑問符をつけていたが……。

 馬場もこの日の内容には「課題の多い試合でした。全体的に球が高かったり、初回の入り方も、何となくズルズルといってしまった。結果的に抑えているのはいいんですが、これが1軍だったらと考えると納得できないです」と反省するばかり。確かに初回から鈴木昂、吉田雄に連打を浴びて1死一、二塁のピンチを招いた。続くマレーロは中飛、T-岡田を三振に仕留めて事なきを得たが、この点が監督の言う1軍だったら……、と本人も認めるズルズルと入った初回の反省点になる。

 ただ、反省の中にもこんな一面があった。「この人だけは絶対に抑える」の強い思いである。この試合、オリックスの5番にT-岡田が座っていた。1軍で活躍している選手との対決。気合十分。初回が2死一、二塁。3回が2死満塁という場面だったが、第1打席はスプリットで空を切らせて三振。次打席は平凡な中飛に打ち取った。軍配は完全に馬場に上がった。1軍想定の見せ場を思わせるシーンだったが、頼もしい一面も見せてくれた。10日、1軍に合流した。

 物議を醸す内容だったが、馬場皐輔、8月12日、横浜スタジアムのマウンドに立った。「同一リーグのチーム相手に投げたい」思いがついに実現した。1軍の初マウンドは交流戦だったが、今回は正真正銘セ・リーグのDeNAが相手だ。「気持ちで負けないように向かっていきます。まずは失投など防げるミスをなくして、しっかり自分のピッチングをして、0に抑えるのが大事だと思います」という馬場の話だったが、コメントとは裏腹に失投はあった。思い切りのいい自分のピッチングにもほど遠かった。

 試合開始直後、ベンチに座って出番を待つ馬場の顔が大きくテレビにクローズアップされた。表情が硬い。鳴尾浜の馬場ではない。明らかに緊張しているのが見て取れた。やっと笑みが出たのは糸井の2ランが右翼席へ飛び込んだ時。が、ぎこちない。

 いよいよマウンドへ。先頭の神里は一ゴロに打ち取ったものの、続く石川には左前打。盗塁とキャッチャーの悪送球で2死三塁、バッターは筒香。新人が立ち上がりから厳しい局面を迎えた。強打者との対決。懸命のピッチングで一ゴロに仕留める。ピンチを切り抜けたことで精神的に落ち着きを取り戻し、2回からは気持ちの上でも乗っていけるものと期待していたが、まだ心技ともに力不足なのか、事もあろうに投手の今永に四球を与えてしまう。ピッチャーとして“絶対”がつく、やってはならないことをしでかしてしまった。アマチュアで培ってきたもの、プロに入ってつけた力を出し切れないまま終わった。さぞや悔しいことだろう。

 本人も「一番の反省点」に挙げていたが、DeNA戦のすべてはこのストレートの四球が物語っている。いかんともしがたい内容。あとは見ての通りだ。ドラ1。期待は大きく、注目度も高い。馬場が鳴尾浜から出直しを図る。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

DeNA戦に先発も2回2/3で降板となる馬場皐輔(2018年8月12日撮影)
DeNA戦に先発も2回2/3で降板となる馬場皐輔(2018年8月12日撮影)