2013年(平25)夏、岩手・花巻東の身長156センチの千葉翔太外野手(19)は、ファウルで粘る「カット打法」で注目を浴びた。球数を稼ぎ出塁するだけでなく、打っても4戦7安打と活躍し、チームの4強入りに貢献した。

2013年夏の準々決勝 1回表花巻東1死、千葉は投球をカットし、四球で出塁する
2013年夏の準々決勝 1回表花巻東1死、千葉は投球をカットし、四球で出塁する

 千葉・津田沼にある日大野球部の寮を訪ねた。身長156センチに、短く刈り込んだ髪形。大学生になっても「何にも変わらないんです」と笑う千葉がいた。

 13年夏の甲子園。初戦彦根東(滋賀)戦では、3回に13球投げさせ四球を誘うなど5打席中4度出塁。千葉1人に34球を投げさせる「カット打法」で注目された。

 千葉 初戦はめちゃくちゃ緊張していました。センターから見ると、とっても球場が広く感じて。とりあえず全力でやろうと打席に立った結果です。練習の成果が出せました。

 前年秋、花巻東は岩手県大会で初戦敗退。「バントが出来ればいいかな」ぐらいに思っていた千葉はその冬、2番の仕事を考え、突き詰めた。

 千葉 ファウルというか空振りしないように、意識付けて練習しました。バントは100%決められるように。ライナー、強いゴロを打つことをひたすらやりました。それで自然と、ミート力とか、バットコントロールが付いたのだと思います。

 2回戦の相手は、最速153キロの安楽智大擁する済美(愛媛)。千葉を警戒した済美・上甲正典監督(故人)は内野を5人にする「千葉シフト」を敷いた。千葉は、その奇策の裏をかき、三塁打を含む3安打で安楽を打ち崩した。

 千葉 とにかくびっくりしました。打席に入るとタイムがかかって、センターが前に出てきたので…。3安打とも甘いボールでした。先輩に大谷(翔平)さんがいて、僕は小学生の頃から見ていたので速い球は見慣れていたんです。いいところに転がってくれました。

 続く準々決勝鳴門(徳島)戦ではエース板東湧梧相手にカットで計41球も粘り、4四球と安打で全5打席出塁と活躍。だが、花巻東は試合後に大会本部から、意識的にカット打法を続けた場合はバントとみなす場合がある、と異例の説明を受けた。準決勝延岡学園(宮崎)戦では、千葉は1球もファウルを打たず、試合に敗れた。

 千葉 (佐々木洋)監督からは「今日は普通に打っていこう」とだけ言われました。1打席、1打席の内容は悪くなかったんです。相手の守備の位置が良かった。あと1歩で抜ける打球ばかりでした。

花巻東・千葉の甲子園打撃成績
花巻東・千葉の甲子園打撃成績

 千葉といえば「カット打法」というイメージがついて回る。千葉本人は「それはそれでいい」と受け止める。

 千葉 (カット打法は)封印してません。今でも練習してます。大学でも出来ることはやっていこうという感じでやってます。場面、状況に応じて仕事ができる選手になりたいです。

 現在東都2部に属する日大で野球を続ける。1年生だった昨年、春はベンチ入りしたが出場は代走のみ。秋はベンチから外れた。大きな目標を胸に2年の春を迎えた。

 千葉 大学野球は小さい選手はあまりいないんですけど、それでも出来ることを見せられる大きな選手になりたい。野球に、身長は関係ないです。行ければ、プロや社会人など強いチームでプレーしたいです。(敬称略)【高場泉穂】