オリックス対阪神 6回表阪神2死一塁、福留孝介の二ゴロでリプレー検証のすえ二塁封殺となる大山悠輔(撮影・清水貴仁)
オリックス対阪神 6回表阪神2死一塁、福留孝介の二ゴロでリプレー検証のすえ二塁封殺となる大山悠輔(撮影・清水貴仁)

指揮官・矢野燿大はある意味で「記者泣かせ」だ。取材には基本、キッチリ答えるし、言葉も明確だし、では何が困るのか。それは選手を責めないからだ。

過去、監督は選手のミスを指摘したり、叱責(しっせき)したりしてきた。03年優勝の闘将・星野仙一も、阪神では勝てなかったが名将の野村克也もそうだった。それで記者は記事が書けた。

矢野は常に前向き、プラス思考で選手を一方的に責めることはほとんどない。だからそういう種類の記事を書きにくい。出てこない。例外といえるのは木浪聖也が振り逃げをする場面でそれをしなかったときだろうか。そのときもきつい言葉ではなかったが「当たり前のことをしない選手を使いたくない」という意味のことを言った。

そして今回だ。大山悠輔を厳しく指摘した。野球を少しでも知っている人なら首をかしげたあのプレーだ。6回、一時は勝ち越しとなる適時打を放った大山が走者にいた2死一塁。福留孝介の当たりは深い二ゴロで封殺となった。

最初はセーフの判定だったがオリックス側がリクエストを要求し、判定が覆った。モニターで見ていても間一髪、アウトだったように見えた。

なぜ滑らないのか。率直にそう思った。可能性としては中前へ抜けた場合に一気に三塁まで行くことを考えていたのか。悪く見れば一塁へ送球するだろうということで緩めたのか。

「論外ですよ。あそこで滑らないなんて。監督が言う通りでしょう。周りに迷惑がかかる。あれは考えられないプレーです」。内野守備走塁コーチの久慈照嘉は険しい顔でそう言った。

久しぶりの適時打でホッとして、エアポケットのようになっていたのか。「あれで負けた」と言えば気の毒な気もするが真剣勝負はそういうものだ。少しでも気を抜いたおかしなプレーがあれば危機は訪れる。実際、あそこで大山が生きていればさらに後続があった可能性もあったのだ。

自らの「決勝打」を1つのプレーで台無しにしてしまったような感じもある。大山は4回にも見ている限りでは何でもないゴロを送球エラーしていた。しかし適時打でそれを取り返した。苦しい戦いを続けている若き4番打者だ。つらいだろうが、ここはかなりめずらしい指揮官の“怒りのターゲット”となって、次に生かすしかない。(敬称略)

8回裏オリックス1死二、三塁、西の降板を告げる矢野監督(撮影・清水貴仁)
8回裏オリックス1死二、三塁、西の降板を告げる矢野監督(撮影・清水貴仁)