14人きょうだいの“ビッグファミリー”の三男(6番目)、九州国際大付(福岡)のエース富山(とみやま)凌雅投手(3年)が、6回1失点の好投で6年ぶりの勝利に導いた。家族が見守る前で、鳴門(徳島)に勝利した。

 “ビッグファミリー”の男が、ビッグな甲子園1勝をもたらした。九州国際大付のエース富山が、スタンドに応援に駆けつけた大家族の前で好投。6回には押し出しで1点を許したが、力任せだった昨年の反省を生かし、制球力重視の投球で後続を抑えた。14人きょうだいの6番目の三男で、実家の和歌山から応援に駆け付けた母、姉、8人の弟がスタンドに並ぶ中、初戦敗退した昨夏のリベンジを果たした。

 「勝ってホッとした。去年の借りは返せました。家族で野球をしているのは僕だけ。弟たちが一生懸命な姿を見て喜んでくれたら、うれしい。親にはありがとうと言いたいです」

 背番号13だった昨夏は初戦の東海大四戦に先発し、3回途中3失点でKO。ベンチで悔し涙を流した。母美薫(みか)さん(46)から「泣いてるままで終わったらあかんよ」とメールが届くと「待っとけや。来年は俺がエースでここに戻ってやる」と返事を送った。あれから1年。待ちわびた舞台だった。

 母は富山が小4の時に末っ子を生み、その3カ月後に離婚。女手一つで大家族を養ってきた。和歌山を離れ、福岡県での寮生活が始まると、月10万円の仕送りを欠かさず続けてくれた。富山は寮生活がつらく、やめたいと思った時期もあったが、母の苦労を思うと口には出せなかった。将来は「(プロ入りし)家族を楽にさせたい」。男兄弟11人全員で草野球をしたこともある大家族。「きょうだいが多いのは恥ずかしい」と言いながらも「家で一緒に遊べるし、楽しいですよ」と照れ笑いを浮かべた。家計への負担は百も承知。周囲には「何かの形で返したい」と話していた富山。勝利での恩返しを胸に秘め、腕を振ってつかんだ念願の甲子園勝利だった。【福岡吉央】

 ◆富山凌雅(とみやま・りょうが)1997年(平9)5月3日、和歌山県生まれ。御坊少年野球クラブで小1から野球を始める。小5から中3までボーイズ御坊ジュニアタイガース。九州国際大付では昨夏も控え投手としてベンチ入り。高校通算5本塁打。家族は母と姉3人、兄2人、弟8人。178センチ、82キロ。左投げ左打ち。