運命の地で、199チームの頂点に立った。2年連続21度目出場の札幌第一が、北海道栄を逆転で下して、5度目の決勝進出で初制覇。主将のエース上出(かみで)拓真(2年)が、投げては散発3安打1失点(自責0)で準々決勝から3戦連続完投、打っては全2打点を挙げる活躍で、投打の主役となった。旭川スタルヒンでは、90年春に続く全道優勝。創部58年目で念願のセンバツ(16年3月20日開幕、甲子園)切符をほぼ手中にし、明治神宮野球大会(来月13日開幕、神宮)の出場権を獲得した。

 運命に導かれるように、旭川の夕空に札幌第一・菊池雄人監督(43)の体がナインの手で宙を舞った。「僕にとって思い出の場所。素直にうれしい」。前回、旭川で全道大会が開催された90年春。あの日と同じ三塁側ベンチで、スコアも同じ2-1。当時、優勝投手となり、チームを3季通じて初の道大会制覇に導いたOB監督の目には、うっすら涙が浮かんでいた。

 エースで主将の上出が、投打にわたってチームを支えた。立ち上がりの1回、四球から走者を背負い、味方の失策で早々と1点を失った。勢いは北海道栄。打線は再三、走者を得点圏に進めながら、ホームが遠い。だが、背番号1は踏ん張った。「流れが悪かったので、自分で何とかするしかないと思った」。許した安打は3本だけ。4者連続を含む9奪三振と、圧巻の投球を見せる。打っては6回1死二、三塁から自らの遊ゴロで同点とし、8回には勝ち越しの中前打。9回の守備、2死三塁のピンチでは「後悔のないよう直球で攻めた」。こん身の134球目で最後の打者を投ゴロに仕留め、ほえた。

 準々決勝から3戦連続で完投し「(90年春に優勝投手となった)監督の後に続けて良かった」。初戦の帯広工戦で初めてマウンドを踏んだ時から「足場が硬くて掘りづらいので、安定して投げやすい」と好印象を口にし、覚醒の予感はあった。「僕はこの球場で、投手として何かをつかんだ。スタルヒンで成長させてもらった」と振り返った指揮官は、上出の姿に、25年前の自分を重ね合わせた。

 中学時代のスター選手をそろえても、なかなか全道では勝てなかった。スタメンに4人並ぶ1年生を2年生が支え、初めてたどり着いた秋の頂点。菊池監督は「崩れそうなところで、みんながつながってくれた結果」と、チームの絆を強調する。創立記念日に悲願のセンバツ出場を当確とし花を添えたが、勝負はこれからだ。まずは、来月の明治神宮大会が良い試金石となる。「現時点での力を知り、センバツにつなげていきたい」。上出の言葉に、一層、力がこもった。【中島宙恵】

 ◆札幌第一 1958年(昭33)創立。男女共学の私立校。文理選抜、文理北進、総合進学の3コースあり、生徒数1207人(女子532人)。創立と同時に創部された野球部は甲子園に夏3度出場。バドミントン、バレー、サッカーなども強豪で、主な卒業生に陸上10種競技で日本記録を持つ右代啓祐、バレーボール男子日本代表の出耒田敬ら。所在地は札幌市豊平区月寒西1の9の10の15。浜館宏樹校長。