岩手の怪物2年生右腕が歴史を変えた。シード校・千厩(せんまや)の背番号11、千葉英太が久慈戦で23三振を奪った。延長13回ながら、1試合最多の20を3つ上回り、大会記録を35年ぶりに更新した。9回まで15奪三振。延長に入ってもペースは衰えず、4点リードで迎えた13回無死から21個目。残り2つのアウトも三振で締め、完封こそ逃したが1失点の完投。チームを04年以来12年ぶりのベスト8に導いた。

 最後は138キロの速球で見逃し三振を奪った。花巻東時代の菊池(西武)、大谷(日本ハム)でもできなかった、大会記録を更新する1試合23奪三振。延長13回とはいえ、まだ2年生の千葉がやってのけた。「記録は終わってから知りました。気付いていなかった。うれしいです」。素直に笑顔で喜んだ。

 9日の一関高専との初戦(2回戦)後に、風邪をひいた。まだ治らず「せきが止まらない。体調が悪くて」と言いながら、マウンドに立てば別人になった。「投げていて行けると思った」と、4回に自己最速を1キロ更新する142キロを計測。120キロ台後半のスライダーとのコンビネーションで、三振の山を築いた。

 10回裏には無死満塁と、サヨナラ負けの窮地を脱した。1死後に速球でスリーバントスクイズを失敗させ、直後の打者を空振り三振。「ピンチでは狙っていた」と胸を張り「三振で終われば流れが良くなる」と言ってのける。12回まで0-0。「途中で疲れましたけど、代わったら流れが変わる」。背番号は11でも既にエースの風格がある。

 昨秋まで三振の取れる投手ではなかったが、冬場の下半身強化などが、伸び盛りの右腕の素質を花開かせた。軽米との春の県大会1回戦では、16奪三振をマークして自信をつけた。菊池康弘監督(50)は「日々、ブルペンでボールの回転をチェックしている」と話し、常にレベルアップを考えている。練習試合に何度も登板して経験値も上がった。千葉は「2ボールからカウントが取れる」と成長を感じ取っている。

 12年ぶりの8強入り。明日20日の準々決勝は一関工と顔を合わせる。春の一関地区予選で敗れ、その試合に2番手で登板した千葉は本塁打を浴びた。「みんなリベンジと言っている」。今大会3試合26回2/3を投げて三振は47個。奪三振率15・90の「岩手のドクターK」は、雪辱への強い思いを秘めている。【久野朗】

 ◆夏の岩手大会の1試合最多奪三振 81年に広田水産の佐々木昌章投手が、3回戦の伊保内戦で奪った20三振。佐々木は9回を投げ4-0と完封した。9回までの試合としては、この記録は破られていない。