習志野・内田翔太投手(3年)が、ベンチ外からMVPに躍進した。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)千葉大会の成田戦で先発し、6回1/3を6安打1失点の好投で勝利に導いた。当初は選手登録から外れていたが、その後の練習態度などが評価されて登録変更でベンチ入り。巡ってきた先発のチャンスをつかんだ。

 初めての舞台で、内田が躍動した。スライダー、カーブ、そして直球を低めに集めて凡打の山を築いた。公式戦初登板だが、練習してきた成果を存分に発揮した。Aシードの成田を相手に6回1/3を6安打1失点。「公式戦初登板で緊張したが、気持ちで投げきりました」。当初はベンチ入りメンバーから外れていた左腕が、勝利に導き、笑顔を浮かべた。

 ベンチ入りから外された直後は悔しく、落ち込みもした。だが、最後のチャンスにかけて練習に励んだ。メンバーのサポートをしながらも、投球練習にも力を入れた。「投球練習で打者を立たせて、低めにボールをコントロールする練習をしていました」。毎日投げ込んだ。そんな姿を小林徹監督(54)は見逃さなかった。登録変更の締め切り直前、「お前は入れるから」と言われた。

 小林監督が変更を決めた理由は2つあった。1つは「頑張っていたから。一生懸命に練習する姿は他の部員の見本になっていた」。もう1つは戦略的なものだった。「左腕で緩急が武器だから、それが生きるのではないかと考えた。(理由は)その半分半分かな」。成田には緩急が有効と考え、前日に先発を言い渡した。

 内田は驚きながらも意気に感じた。「自信を持っていけと言われた。Aシード相手の大一番で自分に任せてくれて、期待されているなと感じた。それが大きな自信になりました」。ベンチ外から一気にMVPの活躍を演じたが、内田は満足していない。「粘り強く投げられたとは思うが、今日は死球を出して、交代をしてしまい、もう少し投げたかったという気持ちが強い。やっぱりエースには負けたくないです」。ベンチ外から始まったサクセスストーリーを、5年ぶりの甲子園出場へ続けていく。