早実・清宮幸太郎内野手の2年生夏は、悔し涙で幕を閉じた。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)西東京大会準々決勝の八王子学園八王子戦に「3番一塁」で出場。3回に右中間二塁打を放ったが、3点を追う9回は1死一、三塁で右翼への大飛球が犠飛に終わった。神宮での1発は昨夏に続いて出ず、4-6で敗戦。最高学年になる新チームで主将に就任する可能性が高い怪物スラッガーは、残り2回の甲子園行きのチャンスにすべてをかける。

 清宮の願いを込めた一打は、右翼スタンドまで届かなかった。本塁打が出れば同点の9回1死一、三塁。初球だった。「狙っていた」と内角の135キロストレートを振り抜いた。「入ってくれ」。高く舞い上がった打球は風に押し戻された。右翼手のグラブに収まると一塁上で頭を抱え、試合後は涙が止まらなかった。

 「最後に自分がつなげられず、3年生の夏を終わらせてしまって申し訳ない。あの打席は絶対に忘れない。甲子園は遠い場所だと、あらためて思いました」

 勝負を避けられても、敗戦の責任を背負い込んだ。5回戦に続き、初回と5回に走者二塁の場面で敬遠気味に歩かされた。「後ろに野村がいるので、割り切ってやった」。4番野村大樹内野手(1年)を信じ、我慢を続けた。だからこそ、最後の1球を悔やんだ。

 「こすって、(打球が)上がりすぎてしまった。アウトかホームランだと思ったけど、ダメでした…。ここぞの場面で1本が出ない。まだ、日本一のスラッガーへの道は長いです」

 屈辱を糧に、最強のリーダーになる。昨夏は加藤雅樹捕手(早大1年)、現チームは金子銀佑内野手(3年)が、主将として清宮の能力を最大限に引き出した。「2人の1つ1つの言葉が心に刻まれている。自分が主将になるかも、2人のようになれるかも分からないけど、できる限りのことをしてチームを引っ張る」と言った。和泉実監督(54)は「まだ(主将は)決めていない」と前置きした上で、「立場を分かって発言するし、中心選手の自覚が出てきた。試合中もキャプテンと同じようなアドバイスや声掛けをする」。小、中学生時も経験のない役割を任される可能性は十分だ。

 今夏5試合で12打数7安打3本塁打8打点と打ちまくった。この日視察したU-18(18歳以下)日本代表の小枝守監督(64)の前で1発は出なかったが、8月下旬から行われるU-18アジア選手権(台湾)代表招集へ十分な数字を残した。BS-TBSが全試合中継する見込みで、侍ジャパンのポスターにも起用された清宮が名を連ねても不思議はない。

 高校通算53発を積み重ねてきた17歳は、目を真っ赤にして言った。「この負けが、いつか必要な負けだったと思えるように、日々の練習に取り組みたい」。夏の終わりと同時に、高校最後の1年が始まる。【鹿野雄太】