第89回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で開かれ、昨夏の甲子園で優勝した作新学院(栃木)が5年ぶり10度目の出場を決めた。西武にドラフト1位で入団した今井達也投手(18)のようなスターはいないが、添田真聖主将(2年)を中心としたチームワークは抜群。83年の池田(徳島)以来5校目となる夏春連覇を狙う。

 元NHKアナウンサーの船田恵理事長が午後3時10分、出場決定の吉報を受けた。すぐさまグラウンドで待つ野球部員に伝えられると、小針崇宏監督(33)に添田主将、エース大関秀太郎(2年)が順々に胴上げされた。小針監督は「新チーム結成当初から全員で(夏の)優勝旗を返そうとしてきたが、舞台をいただきましたので、上を目指してやりたい。実感がわいてきた」。史上6校目となる夏連覇の前に、5校目となる夏春連覇というさらに希少な挑戦権を得た。

 昨夏甲子園優勝メンバーはごっそり抜けたが、伝統を受け継ぐ。添田主将は「去年の先輩たちより(個々の力は)落ちるが、みんながカバーし合える」と持ち味を強調した。山本前主将からは甲子園の雰囲気について「(宇都宮の)清原球場とは違う。自信を持ってやるように」と助言も受けた。「周りの人から認められるチームを目指したい。最終的には連覇したいけど、1試合1試合挑戦していきたい」と目標を語った。

 昨年11月、監督として62年に史上初の甲子園春夏連覇を果たした山本理氏(享年83)が死去した。小針監督は「自分に対しても敬語を使ってくださるような方でした。ひと言ひと言が心に残っています」。連覇を果たし、怪物江川を育てた実績がありながら、孫ほど年齢が離れた監督に対しても偉ぶらず、全幅の信頼を置いてくれた。昨夏に続き、手向けの白星を重ねることで恩返しをする。

 山本氏流の謙虚さは選手にも染み付いている。昨秋公式戦でチーム最多の11打点を挙げた鈴木萌斗外野手(2年)が「みんなに認められるプレーをしたい」と言えば、エースで4番の大関も「秋もそうだけど、応援してくれた人々のおかげ。恩返しのつもりでセンバツに臨みたい」。チームの中心選手であっても、感謝の気持ちを忘れない。

 昨秋は関東大会を制したが、明治神宮大会は初戦敗退した。「投手力の差があった。いい投手からどう点が取れるか。エラーをしないチームでないと」と小針監督。今後の練習で課題を克服し、甲子園に乗り込む。【斎藤直樹】