<高校野球・秋季東北大会:秋田商1-0山形中央>◇12日◇青森市営球場◇準々決勝

 インフルエンザのためベンチ入り12人で臨んだ秋田商(秋田)が、山形中央(山形)に1-0でサヨナラ勝ちし、4年ぶりの準決勝進出を決めた。左腕須田貴司(2年)が5安打完封。9回裏、三浦広大(2年)の右前打でケリをつけた。

 歓声を上げて12人が、ひとかたまりになった。9回裏2死満塁から、9番三浦が右前打を放ち、三塁走者の松橋龍生(1年)がホームイン。均衡が続いた試合の苦しさだけでなく、インフルエンザで12人しか試合に臨めなかった苦境に、秋田商が打ち勝った。

 2日前の10日からナインが発症した。青森入りした部員30人中18人が感染し、既に秋田へ帰った。このうち8人が大会登録メンバーで、大会のベンチ入り選手数20人から、彼らが抜けた。幸いレギュラーはほぼ残ったが、選手交代もままならない、ぎりぎりの状況だった。

 太田直監督(30)も、この日朝から発熱。午前中は宿舎で横になっていた。「棄権も考えた。だが、秋田に帰った部員たちに、いいお土産を持って行こうとナインと話し合った」。試合開始から「涙が出そうになった」という太田監督。「選手たちの心が折れなかった。よく頑張った」と声を詰まらせた。

 須田は切れのいいストレートとスライダーで公式戦初完封。「秋田に戻った仲間のために一生懸命投げた。12人しかいないからこそ、前向きに元気を出して行こうと思った」と話した。サヨナラ打を放った三浦は「無心で振った。秋田に帰った仲間も一緒になって戦っているつもりだった」と語気を強めた。

 苦難を乗り越え、4年ぶり6度目のセンバツへ大きく前進。センバツ切符“当確”をかけた13日の準決勝は、本荘との秋田対決。県大会準決勝では5-6で敗れているが、須田は「リベンジで、センバツというお土産を仲間に届ける」と誓った。【北村宏平】