北の快速右腕が本領発揮だ。第84回選抜高校野球大会(21日開幕、甲子園)に21世紀枠で初出場する女満別(北海道)が11日、千葉商大付と今年2戦目の練習試合に臨み、0-0で引き分けた。最速145キロのエース二階堂誠治(3年)が散発2安打11奪三振で完封。10日の松戸国際(千葉)戦では8回9失点と精彩を欠いたが、重心を低くしたフォームで修正能力の高さを示した。千葉遠征を打ち上げたチームは帰道し、明日13日に大阪入りする。

 女満別の怪童が一夜にして変身した。今季2度目の土のマウンドで、二階堂が躍動した。連投にもかかわらず、甲子園経験校を相手に「0」を9個並べた。打者31人に対し、2安打11奪三振1四球。「狙いにいって三振が取れた。直球も変化球も本来のキレでした」。充実した112球を、不敵な笑みで振り返った。

 “快投ショー”は3連続空振り三振で幕を開けた。中前へポトリと落とされた6回1死までは完全ペース。右打者にはシュート、左打者にはスライダーで内角を突き、フォークを振らせて直球で勝負した。鈴木収監督(43)は「昨日の反省が生きて、彼の力がかなり出せていた」とエースの修正能力を高く評価した。

 今季初実戦だった10日の松戸国際戦は、8回9安打8四死球と制球に苦しんだ。雨でグラウンドはぬかるんだが、創部59年目での歴史的な道外校初対戦も意識した。毎夜記入する1日の反省カードには「落ち着いて投げる」と書き込んだ。「下半身も使えていなかったので、軸足の重心を低くした」。平常心を取り戻した投球フォームは力強く、明らかに変貌していた。

 センバツ出場選手登録のサイズは176センチ・73キロ。体重は現在75キロで、昨秋より7キロアップしている。雪上グラウンドで長靴を履き、直径1メートルあるトラックのタイヤ引きを毎日塁間3往復し鍛えた。鈴木監督は「下半身は太くなっているので、その効果がどう出てくるのか楽しみ」と目を細めた。

 昨春全道で143キロ、夏の北北海道で145キロをマークし、脚光を浴びる存在になった。この日は球速表示こそなかったが、女房役の平田悠人主将(3年)は「冬を越してスピードは間違いなく速くなった」と話し、本人も「145以上は出ている感覚があります」と自信を込める。2泊3日の強行遠征で目覚めた日本最北の注目右腕が、満を持して甲子園に乗り込む。【榎本優】