<センバツ高校野球:大阪桐蔭5-3九州学院>◇27日◇2回戦

 九州学院(熊本)が「1球」に泣いた。2点リードの6回2死一、二塁でエース左腕大塚尚仁(3年)の勝負球、内角直球がボール判定。続く球を大阪桐蔭の笠松悠哉三塁手(2年)に逆転3ランされた。明暗を分けた痛恨の1球。8強目前の悔しい敗戦に選手たちは、夏のリベンジを誓った。

 自信の勝負球だった。2点リードの6回2死一、二塁。カウント2-2から大塚が投じた真っすぐが、笠松の懐をえぐる。捕手の浅川は「ベストボール」と断言した。しかしボール、微妙なハーフスイングもセーフと判定された。フルカウント、浅川は同じ球を要求。力んで高めに浮いたボール球を左翼席へ運ばれた。

 「(笠松の)ビデオを見て、あそこしか打てない高めにいってしまった」と浅川はうなだれた。大塚も「甘い球を打たれてしまった」。浅川によると、大塚の被弾は紅白戦で味方に打たれただけで、試合では初という。それを甲子園で、特大2発を浴びた。「打つべきところで打ちますね。抜け球だが、打った打者をほめるしかない」と坂井宏安監督(54)は脱帽だった。

 5回までは、完璧な投球で強打の大阪桐蔭打線を封じ込んだ。3回に連打で2死二、三塁のピンチを背負ったが、強気な攻めの投球で切り抜け、4回裏の先制点を呼び込んだ。流れは九州学院にあったが、1球で暗転した。「ガクッときた」とエースは言う。1年夏から3年連続の甲子園で、1球の怖さを思い知った。

 この悔しさ、教訓を夏につなげる。「自分たちの弱さが見つかった。地力が向こうにあって、それにのまれてしまった」と主将の萩原は言った。投攻守の総合力の高さで、自信を持って乗り込んだ甲子園。しかし全国の壁にはね返された。「最高の基準が分かった。夏に向けていい経験をした」と坂井監督。「魔の1球」から九州学院は再スタートを切る。【実藤健一】