<秋季高校野球福島大会:日大東北5-1聖光学院>◇20日◇準決勝◇福島・開成山球場

 絶対王者をついに倒した。日大東北が聖光学院を下して決勝進出、3年ぶり9度目の東北大会出場を決めた。今夏の決勝戦にも出場したエース大和田啓亮(けいすけ)、遠藤拓夢(たくむ)捕手(ともに2年)のバッテリーが、直球8割の強気の配球で1失点と雪辱を果たした。聖光学院が08年7月から続けていた県内公式戦連勝記録は95でストップした。

 エース大和田は最後の打者を二直に打ち取ると激しく何度も両拳を突き上げた。マウンドに集まった仲間と喜び合い、校歌を歌いながら涙を流した。「聖光学院を倒したことと東北大会に行けるのとで、うれしくて(涙が)止まらなくて…」。夏の決勝で対戦した時は6回途中から救援し、延長10回に1死二、三塁のピンチを招いて降板、サヨナラ負けした。春の県大会でも敗れた相手に三度目の正直で雪辱。2カ月前の悔し涙がうれし涙に変わった。

 18日の初戦(2回戦)東日本国際大昌平戦から3日連続の完投勝利。それでも「疲れはなかった」と、9回まで140キロ台の直球を投げ続けた。19日夜には、いつもは軽く入る湯船にゆっくり30分つかり、歌をうたってリラックスしながら疲れをとった。7回まで4-0と打線の援護を受けながら「最後まで気を抜かないようにと思っていました」。スタミナも集中力も最後まで途切れなかった。

 聖光学院打線を直球中心で8安打1失点に抑えた。大和田の好投を支えたのが遠藤拓だった。「(2回までに)スライダーを狙っているなと気づきました」。相手ベンチの作戦を読み切り、以降はほとんど直球だけで攻めた。春から使うミットは最速145キロの大和田の球を受け続けてボロボロに。この日は継ぎ目のひもを新調して好リードを見せた。1点を返された直後の9回1死二塁から勝利を決定づけるタイムリーを放つなど2安打2打点。「1点に抑えている大和田を助けたかった」とバットでも勝利に貢献した。

 3年ぶりの東北大会出場も決めた。大和田は「仙台育英と対戦したい」と、聖光学院に並ぶ強豪との対戦を希望した。中村猛安監督(34)も「レベルの高い試合を経験したい」とさらなるチーム力向上を目指す。県内で約6年間白星を並べ続けた王者を倒した自信を胸に、03年夏以来11年ぶりの甲子園へのステップを駆け上がる。【高場泉穂】

 ◆大和田啓亮(おおわだ・けいすけ)1996年(平8)6月14日、福島県玉川村生まれ。須釜中1年で野球を始め、捕手から投手に転向した。日大東北では1年秋からベンチ入り。最速145キロ。家族は両親、兄、弟、妹。178センチ、70キロ。右投げ右打ち。血液型A。