<高校野球秋季福島大会:日大東北3-2聖光学院>◇20日◇準々決勝◇鶴巻

 昨年の覇者・日大東北が、今夏の甲子園8強の聖光学院を破った。2-2の8回無死二、三塁から7番高子翔太外野手(1年)が決勝の中犠飛を放ち、右腕エース岩城光(2年)が完投した。今夏の福島大会決勝延長サヨナラ負けなど、13年春から6季連続の宿敵との一戦を制して2年連続4強入りした。

 中村猛安監督(35)とベンチ入り20人が1つになった日大東北が、3季ぶりに聖光学院を倒した。昨秋、宿敵の県内公式戦連勝を95で止めた日と同じ9月20日。中村監督がしみじみと言った。「逆境がありながら…。うれしい1勝」。

 8月31日県中地区大会決勝の試合中に、監督に対して「選手から暴言があった」(中村監督)。湿り気味の打線にストレスがたまり、衝突したという。落合滉樹主将(2年)によると、9月に入った翌日から約1週間、選手だけの練習が続いた。ナインも反省し「グラウンドの石拾いや、芝生の雑草抜きをした」と同主将は明かした。選手ミーティングも繰り返して誠意を示した。県大会直前に通常の練習を再開した。

 聖光学院戦への調整では中村監督が約20分間、打撃投手を買って出た。相手の右腕エース今泉慶太(2年)の決め球、チェンジアップを投げ込んで体感させた。「それが実ったかどうかは分からない」と同監督は言うが、選手が恩に報いた。初回に連打で2点を先制。決勝点は、8回表に同点に追いつかれた直後の裏の攻撃で奪った。

 2年連続の4強入り。東北大会出場にまであと1勝に迫った。夏までのエース大和田啓亮(3年)から譲り受けた27センチのスパイクを履いて完投した岩城は「1戦1戦、先を見ずに戦う」と気を引き締めた。中村監督が「弱小で勝ち進んできたチーム」と評する日大東北は、この県大会で大きく変身。宿敵撃破で勢いをつけた。【久野朗】