北照に、名将の知恵が授けられた。第82回選抜高校野球(21日から12日間、甲子園)に向け和歌山で合宿中の北照が14日、箕島野球部元監督で春3度、夏1度の甲子園優勝歴を持つ尾藤公(ただし)さんの訪問を受けた。河上敬也監督(50)との交流があり、練習試合を観戦。26日の大会6日目に決まった1回戦(対秋田商)までの調整法をアドバイスされるなど、心強いバックアップを受けた。

 北照・河上監督が驚きの声を上げた。「えーっ」。日高高中津分校対福泉の練習試合中、尾藤さんが、甲子園でおなじみの柔和な表情で、ひょっこりと球場ネット裏席に現れた。約束なしの訪問だった。午前に甲子園歴史館の開館式に招かれ、そのまま和歌山合宿中の北照の激励に足を運んだ。

 親交は30年近くになる。82年に就任1年目の河上監督が指導者として教えを請うたのが、箕島の尾藤監督だった。10年ぶりに出場する北照を気にかけ、前日の組み合わせ抽選を受け、経験をひもといた。「6日目になったと聞いて、思い出したんや。昭和52年の春もウチが6日目になって優勝した。でもコンディションの維持に苦労した」。

 抽選後、チームは大阪に滞在する規定だったのを知らずに、尾藤さんは選手の調整を考えて、大会本部に「箕島に戻りたいんやけど」と掛け合ったという。「いかんと、えらいしかられましたわ」。現在も大会本部から練習場所と時間帯が振り分けられ、指定の場所では練習は2時間に限定されている。試合まで間隔があき、ホテル生活も長くなる。

 体調維持のための、尾藤流リラックス法は奔放だ。選手を映画に連れて行った。タイトル「明日に向って撃て」も記憶に残っている。「すぐに寝てしまいましたけど」という監督と対照的に、選手は喜んだ。また、チームをグループ分けし、選手たちの希望で買い物などの気分転換を積極的に行った。

 河上監督も「大会中、2度くらいは甲子園に連れていき試合を見せたい。雰囲気にも慣れるしね」と尾藤流を取り入れる。練習試合を見届けた尾藤さんは「打撃はコンパクトな振りでよく飛んでいる。機動力もあって楽しみ」と打線を評価した。笑顔と日本一の経験伝授は、北照に力となったはずだ。【中尾猛】