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監督ビッグ3は尾藤、蔦、中村で決まり

<アナタと選んだ史上最高物語(7)監督編>

 ◆史上最高の監督ベスト10 <1>蔦文也(池田)<2>中村順司(PL学園)<3>木内幸男(取手二・常総学院)<4>香田誉士史(駒大苫小牧)<5>尾藤公(箕島)<6>渡辺元智(横浜)<7>高嶋仁(智弁和歌山)<8>栽弘義(沖縄水産)<9>阪口慶三(東邦・大垣日大)<10>山下智茂(星稜)

【飛び抜けた実績 PL中村順司】

 箕島高のグラウンドでは、野球部員たちが膝を抱えて座っていた。猛練習のさなかだろう、と予想してやって来たのに、拍子抜けもいいところ。地べたに座り込んでいる部員たちからは、時折笑い声がわき起こる。高校生たちの前には監督の尾藤公。短い頭髪、真っ黒に日焼けした顔で、部員たちに語りかける。「な、犬でもこんなことが出来るんやで。訓練、練習の成果は必ず出てくる…」。慈父の口ぶりだった。

 野球部員に警察犬の訓練を見せていたのだ。1979年、石井-嶋田のバッテリーで春夏連覇の偉業を達成する前だった、と思う。「ボールを追いかける練習ばかりではなく、時にはこんなこともしてますねん。視野が広がると思いますから…」。だが、この穏やかさに至るまでには、さまざまな経緯があった。

 66年、監督就任。70年春にはもう全国制覇を果たした。徹底的なスパルタ訓練。軋轢(あつれき)、批判…。尾藤は信任投票を行い、そして1度は身を引いている。そんな紆余(うよ)曲折を経た上で、監督に復帰した。選手が失敗しても、甲子園のベンチで白い歯をのぞかせて笑う尾藤の姿を覚えている人は多いだろう。あの大らかさの裏側には、泣きたいほどの労苦が潜んでいたのだ。春夏14回甲子園出場を果たし優勝4回、通算35勝10敗。

 「今日はどこに泊まる? 1杯付き合わなアカンぞ」。山間の池田から「さわやかイレブン」を率い、春準優勝したのは74年。蔦文也はその時から名将になった。だが、会って話すと酒飲みの好々爺。「素質の凄い凄いヤツがいる。野球を続けたらプロ野球にも進めるやろ。しかし、やめよった。生活態度もアカン。もう1度やらせたいけど、呼び戻すわけにはいかんのじゃ」。そんな悩みは常につきまとっただろう。それでも甲子園ではひたすら豪胆に攻めダルマを貫いた。春夏14回出場。優勝3回。通算37勝11敗。

 PL学園の球場に監督の中村順司を訪ねたのは、いつのことだったろうか。80年に就任。81年春、82年春、83年夏と続けざまに全国制覇、84年春は準優勝で甲子園20連勝の離れ業をやってのけた。しかし蔦や尾藤のような大向こう受けするカリスマ性は包み隠したままであった。

 中村が率いるPL学園の練習を見ていて、ふと感じたことがある。投手が全員本格派なのだ。下手投げなどの変則投手がいない。それを問うと、中村は言った。「PLで野球をする子たちは、その野球を中心に据えて自らの将来を考えているんです。上手くなって大学へとか、社会人野球で、あるいはプロへ進みたい、とか…。目先を変えるような投手を作れば、確かに勝ちを拾えるかもしれませんが、この子たちの将来まで考えれば、そんなことは出来ないのです」。賢い人であった。87年の春夏連覇をはじめ、甲子園では春夏各3回の優勝。通算58勝10敗である。

 尾藤、蔦、中村がビッグ3であるのは確実だが、ここは飛び抜けた実績に敬意を表して史上最高の監督という称号は中村順治にこそふさわしい、と結論付けたい。(つづく=敬称略)【編集委員=井関 真】

 ※「日刊スポーツ」大阪本社版で「伝説」好評連載中。

 [2008年8月13日15時52分 紙面から]


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