右肘靱帯(じんたい)再建術を経て今季から復帰したメッツのエース右腕マット・ハービーの球数問題が大きな話題になっている。13年10月22日に手術を受けたハービーは今季開幕から復帰し、強力ローテの柱の1人としてチームを引っ張り地区優勝も目前。ところがシーズン残り1カ月を切ったとき、ハービーの代理人スコット・ボラス氏が「彼は術後1年目なので、年180イニングの投球制限を厳守してもらいたい」と発言し、ハービー自身も「担当医もそう言ったので従う」と公言した。これからエースの力が最も必要となる時期に突然、投球回制限を言い出され、しかもこのときハービーはすでに166回以上を投げていたため、周囲は大慌て。ニューヨークはファンもメディアも手厳しいだけに、ハービーは「チームのために投げないっていうのか?」「もういいよ、ヤンキースにでも移籍してくれ」などと罵詈(ばり)雑言を浴びた。

 トミー・ジョン手術から復帰1年目の投手は実際、どれくらいの回数を投げているのか。過去5年ほどさかのぼってみると、開幕から復帰して1年間ほぼローテを守った先発投手は非常に少ない。13年手術組はハービーのみで、12年手術組はレンジャーズのコルビー・ルイス(元広島)が14年に復帰し170回1/3、ブルージェイズのドルー・ハッチソンが14年に184回2/3、11年手術組では、カージナルスのアダム・ウエインライトが12年に198回2/3を投げた。ウエインライトはさらに復帰2年目の13年には240回以上も投げるというタフぶりでこれは希なケースだが、やはり一般的には術後180回前後に落ち着いている。

 批判の集中砲火を浴びたハービーはその後、前言を撤回してシーズン中もポストシーズンも投げることを表明し、レギュラーシーズンは180回をやや超えることになりそうだ。さらにポストシーズンで登板することも確実だが、米国ではボラス氏が再び声を上げ待ったをかけるのではないかと注目されている。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)