今オフはFA市場の動きがゆっくりしている一方、各球団は来季コーチ陣の体制固めを着々と進めている。ナショナルズのような新監督が就任したばかりのチームはまたコーチの人選が進んでいないが、監督が続投するチームは陣容もほぼ変わらず、すでに体制が決まったチームが多い。

 ところでメジャーでは最近、コーチ職を細分化させる傾向にあり、かつては見られなかった新たなコーチ職が設けられるようになった。例えば「クオリティー・アシュアランス・コーチ」とか「クオリティー・コントロール・コーチ」というのがその1つ。クオリティー・アシュアランスとは直訳すると「品質保証」で、現在はカブスとダイヤモンドバックスの2球団がこの肩書を持つコーチを置いている。仕事内容はスカウティングのデータ分析を実際の試合に生かすための業務を担ったり、通常のコーチのように指導や練習の補助を行う場合もあるが、実際のところチームによってその役割には多少の違いがあるようだ。

 ダイヤモンドバックスには他に「通訳兼任コーチ」という肩書のコーチがおりキューバ出身のアリエル・プリート氏が担当している。日本人選手がメジャーに移籍したときはほとんどの場合、専属通訳が付き、中南米出身選手にはスペイン語が流ちょうな球団広報担当が通訳を兼務することが多いが、通訳兼任コーチというのは30球団でもここだけ。同球団にはヤスマニー・トマス外野手、ヨアン・ロペス投手というキューバ出身選手が2人おり、彼らを助けることが主な業務だという。またマーリンズには「アドミニストラティブ(管理)・コーチ」という肩書のコーチがおり、チャレンジの際のビデオ確認などを担当している。このほか最近目立っているのが、打撃コーチだけでなく打撃コーチ補佐をつけ2人体制で打撃を担当するチームが増えてきたこと。現在、30球団のうち打撃コーチ2人体制になっているのが22球団もある。一方、投手コーチが2人体制の球団はドジャースだけ。コーチ陣の体制によってその球団の方針が見えてくるようで面白い。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)