広島からポスティングシステムを利用しメジャーに挑戦する前田健太投手の、ドジャース移籍が決まった。契約合意のニュースが流れたのは元日の朝(日本時間)だったが、それは意外な人物からのスクープだった。「クリストファー・メオラ」と名乗るツイッターのアカウントが第一報を伝え、複数の著名な野球記者がそれに追随した。メオラ氏は野球記者ではなく、ツイッターのプロフィルには「野球談議とビールが好き」とだけ書いてある。

 このメオラ氏は、実は14年11月にマーリンズが主砲のジアンカルロ・スタントンとメジャー史上最大の13年3億2500万ドル(約390億円)という大型契約を結んだとき、その契約内容を誰よりも早くスクープし話題になった人物だ。もっとも、有名野球記者でもない謎の人物の情報は最初は見向きもされなかったため、メオラ氏はツイッターで野球記者やメディアのアカウント宛てに片っ端からスクープの内容を伝えるメッセージを送った。その内容が正しい情報だったと知れ渡ると米野球メディア業界では「一体何者なんだ」とちょっとした騒ぎとなり、米国の野球メディア関係者が同氏に連絡を取り、何者であるかを探ったという。大物ジャーナリストとして知られているFOXスポーツのケン・ローゼンタール氏もその1人だった。こうして有名野球ジャーナリストたちに自分の存在を認めさせたメオラ氏は、正しい情報を伝える発信者として信頼を得ることになった。

 スポーツの速報を発信する手段としてすっかり定着したツイッターだが、メオラ氏のケースは、こうして有名野球ジャーナリストでもなく記者でさえない無名の存在でもスクープを発すれば脚光を浴びるという面白い事例となった。ちなみに同氏はフロリダ州マイアミの近郊に住んでおり、マーケティング関係の仕事をしているようだ。スタントンと前田は代理人が同じワサーマン・メディア・グループに属しているという共通点があるが、同氏がどのようにスクープ情報を入手したかは明らかにしていない。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)