今年はレギュラーシーズン終盤の地区優勝から始まり、シャンパンファイトを4回ほど取材する機会があった。そこで感じたのは、米球界がどんどん変化を遂げつつある中、メジャーの伝統であるこのシャンパンファイトも、やはり微妙に変わってきているということだ。

 一時期、かなり派手にシャンパンファイトを行うことが流行った時期があるが、今年はあっさり風味のシャンパンファイトが目立ったような気がする。レッドソックスが世界一に輝いた13年頃だっただろうか。当時はまず、使用するシャンパンがかなり凝っており、特別なブランドのものや高級なものを使っていた球団が目立っていた。しかし今年は、シャンパンファイト会場で「Korbel」ブランドのボトルを多く見かけた。米国ではよく知られたカリフォルニアのワインメーカーで、大衆的なブランドだ。シャンパンファイトとはいえ、ビールの方が多く使われているのも最近の傾向かもしれない。中にはジンジャーエールなどのノンアルコール炭酸飲料を結構用意しておくチームもある。レンジャーズなどがそうで、過去にアルコールで問題を抱えていたマット・ブッシュ投手がいるため、そうした選手に配慮してのことだ。

 派手だった頃は、クラブハウスからフィールドに出てきてスタンドに残っているファンにもシャンパンをかけ、はしゃぎ回るということも流行った。しかしファンを巻き込むシャンパンファイトが問題視されるようになり、今はシャンパンをクラブハウス外に持ち出すことはなくなった。10年前はシャンパンファイトの間に必ず葉巻を吸うのも慣例だったが、最近はほとんど見かけなくなっている。

 しかし昔からまったく変わらないのは、必ずクラブハウスの中でシャンパンを浴びせ合うということだ。敵地でシャンパンファイトをするときは、もちろんビジターのクラブハウスで行われるが、ビニールでロッカーを保護するなどしているものの、床はシャンパンやビールでぬかるむほどになる。メジャーのクラブハウスはどこもじゅうたん敷きなので、祝いの後の掃除がさぞ大変だろう。日本のビールかけは冷やさずに使うそうだが、メジャーではシャンパンもビールもしっかり冷やしているのが伝統で、それもいまだに変わっていない。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)