日本ハム大谷翔平投手のメジャー移籍問題で、25歳未満の海外選手に適用される「国際ボーナス・プール」のルールが注目を集めている。25歳未満の国際選手はメジャー契約を結ぶことができず、例外なくマイナー契約になるという。

 これは「スタンダード(標準)マイナー契約」と呼ばれるもので、契約の際に契約金の額、マイナー各レベルの年俸の目安、出来高ボーナスの詳細、メジャーのキャンプに参加するかどうか、高卒選手の場合には奨学金の有無などが決められる。契約した球団は選手がメジャー昇格からFAになるまでの約6年間、保有権を持つことになり、その間は契約を結び直すことも可能だが、長期契約になることはあっても、FAになるわけではないため驚くような高額契約になることはまずないといっていい。

 つい最近、この国際ボーナスプールの契約を批判する選手が現れ、話題になっていた。アストロズに契約金200万ドルで入団を決めた20歳のキューバ出身左腕シオネル・ペレスだ。

 ペレスは最初、アストロズと契約金515万ドルで合意していたが、球団側が左肘に問題が見つかったとして契約を破棄した。ペレスと代理人はそこでFAになれると考え、もしそうならオリオールズが1000万ドルで契約するといってきたそうだが、結局なれず。他球団との契約も検討したが、アストロズなら最も早くメジャー40人に入ることができるからと200万ドルで再び契約することになったという。しかもアストロズは前年のボーナスプールの上限を超え契約金の100%の罰金を支払わなければならないため、515万ドルで契約していたら1030万ドルを払わなければならなかったところを、200万ドルの契約を結べたため400万ドルの支払で済んだ。

 契約はルール5ドラフトの翌日に行われたため、アストロズはペレスを安い金額で獲得でき、ルール5ドラフトで他球団に奪われることもなかった。かなり球団有利の状況となったことから、ペレスは契約までのプロセスに納得がいかず「ルールに翻弄(ほんろう)された」と声明を発表している。

 新労使協定の規定では契約金総額に厳しい上限があるため罰金を支払うことはなくなるが、それでも25歳未満の国際選手の契約は、FAと違い選手側に与えられた選択肢などが限られていることはそう変わらないだろう。新ルールがどのように機能していくか、今後注目したい。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)