メジャーの公式戦も中盤戦にさしかかり、プレーオフ進出を目指す各球団の動きが、にわかに慌ただしくなり始めました。これまで7月31日だったトレード期限が、今年は1日延びて8月1日になりましたが、今季は例年以上に、「早めの仕掛け」が進んでいるようです。

 まず大物に手を挙げたのが、ナ・リーグ西地区で首位ジャイアンツを追うドジャースです。6月30日にブレーブスからバド・ノリス投手(31)を獲得。オリオールズ時代の2014年、15勝8敗、防御率3・65の好成績を挙げた先発右腕を補強し、ローテーションの強化に着手しました。その後、エース左腕カーショーの故障離脱が明らかになったのですが、復帰時期が未定だけに、早めに仕掛けたものと見られています。

 世界一に輝いた2003年以来、13年ぶりのプレーオフを狙うマーリンズも同日、パドレスからフェルナンド・ロドニー投手(39)をトレードで獲得しました。昨季こそ不調だったとはいえ、14年には48セーブでタイトルを獲得し、通算237Sの快速クローザー。今年6月15日、マーリンズのイチローが、ピート・ローズの最多安打を超える日米通算4257安打を放った相手としても脚光を浴びましたが、依然として信頼感のある救援投手として活躍しています。

 マーリンズのマッティングリー監督は「実績もあるし、今も質の高い球種を投げ続けている。我々の救援陣を大いに助けてくれる」と、本気モードを強調しています。先発陣の一角、ウェイン・チェン投手(30=元中日)も「リリーフ陣が良くなれば、先発陣も気持ちとして楽になりますから」と、チーム全体の底上げに手応えを感じ取っているようです。

 メジャーの場合、シーズン中のトレードは、単なる戦力補充というだけでなく、各球団の姿勢を示す「ものさし」としても認識されています。プレーオフを目指して補強する上位球団と、来季以降の再建に方向転換して放出する下位球団との両極に分かれるため、選手のモチベーションにも大きく影響します。

 早めのトレードに踏み切ったドジャース、マーリンズなどは「本気度」を示したわけですが、微妙なのが勝率5割前後から抜け出せないでいる球団です。特に注目されるのは、ヤンキース、マリナーズあたりでしょうか。

 「買い」に出るのか、「売り」に回るのか。

 残り1カ月あまりの期間で、各球団の姿勢、方針は明確になるはずです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)