第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、開催国・米国の初優勝で幕を閉じました。過去3大会は、日本や韓国などアジア諸国でこそ盛り上がりましたが、地元米国では、世界一を決める大会というよりも、親善試合またはオープン戦の延長、のようなイベントとして見られていました。

 ところが、大会運営に危機感を感じたMLB機構が本腰を入れ始めた今回は、着実に認知度が変わってきました。事前の告知だけでなく、日本をはじめ中南米の各国、さらに米国代表の本気度が伝わったこともあり、1次ラウンドから多くのファンが球場に足を運びました。しかも、各地の試合内容は、緊迫した接戦の連続。選手達の興奮は、大会が進むにつれて、徐々に広がっていきました。その結果、5万1565人が詰め掛けた「米国-プエルトリコ」の決勝戦をはじめ、総観客者数は初めて100万人を突破。13年の前回大会から、実に23%増という結果になりました。

 さらに、専門テレビ局「MLBネットワーク」の視聴者数は32%増、グッズ関連の売り上げも、インターネットの「MLBショップ.コム」で50%、球場などで15%、特に1、2次ラウンドが行われた東京では25%と、軒並み増収が記録されました。今大会前、一部ではWBCの存続を危ぶむ声も聞かれていましたが、今大会の盛況ぶりに、コミッショナーのロブ・マンフレッド氏も、ホッとした表情でした。「すばらしい大会になった。もう少し時間はかかるかもしれないが、もっと観客が集まるようになるだろう」。

 ただ、現状のWBCが、認知度だけでなく、開催方法、意義、価値などを含め、一足飛びにサッカーW杯のような世界的な大会になるまでには、まだまだ時間を要することは確かです。メジャー取材歴35年で、米野球記者の重鎮として知られる「MLB・コム」のバリー・ブルーム記者は、「私見」として大会の問題点を指摘しました。「確かに、大会としては盛り上がってきた。ただ、今回のサンディエゴでの2次ラウンドに、米国、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ベネズエラの4強が集まってしまうようなフォーマットは、果たして正解なのだろうか。日本は間違いなくすばらしいチームだが、組み合わせが変わった場合、この4強の中に入ってこられるだろうか」。

 同記者の見解は、4地区での1次ラウンドを終えた後、勝ち抜いた8チームを均等に分散させた2次ラウンドを米国内で行い、その後、決勝トーナメントにすべき、というものでした。

 その一方で、同記者は苦笑しながらも、言葉を続けました。

 「だからといって、観客が入るとは限らないし、ビッグマネーを投資している日本のスポンサーの問題もあるし…」。

 世界中の子供たちが憧れるような大会になってほしいと思う一方で、現実的には、スポンサーの資金なしには運営できません。WBCが、本当の意味で世界中に認知され、権威ある大会となるまでには、もうしばらくの歳月が必要なのかもしれません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)