日本でプレーした経験のある外国人選手が、現役引退後、米国で指導者となっているケースは、今や珍しくありません。

 かつて中日、阪神でプレーし、1994年から3年連続で首位打者に輝いたアロンゾ・パウエル氏(52)も、その1人です。現在は、アストロズの打撃コーチ補佐として、毎日、試合前の打撃投手を務めながらコレア、スプリンガーら若手選手の指導に励んでいます。そんなパウエル打撃コーチにとって、青木宣親外野手の加入は、あらためて日本の野球を思い起こす機会となったようです。

 アストロズといえば、アルテューベ、コレアら若い野手が主軸を務め、破壊力抜群の打線を売り物にする一方で、粗削りな部分も目立っていました。昨季は、チーム打率2割4分7厘(メジャー24位)と低迷しただけでなく、三振数は1452個(同4位)。勢いに乗った時の強みはあっても、シーズンを通すと好不調の波が目立つ印象を残しました。そんなチーム事情もあり、ア軍首脳陣はオフ期間、三振数が少なく、出塁率の高い青木の獲得に動いた背景があるのです。

 パウエル打撃コーチは、青木のプレースタイルが若手へのいい手本とになると期待しています。

 「ノリ(青木)はすごくクレバーな選手。彼は状況に応じて、いかにプレーすべきかをよく理解している。ただ、今は開幕して間もないから、しばらくはいろんな選手をミックスしながら起用している。チーム内に競争があるのは、とてもいいこと。結果を残していけば、どの選手にもチャンスはあるんだ」。

 実際、開幕後の青木は、出場機会が不定期ながらも、23打席で三振はわずか1、出塁率4割9厘(4月14日現在)と、期待通りの働きを見せています。パウエル打撃コーチは、チームプレーに徹する青木の姿を見るたびに、日本の野球の良さを再認識するようです。

 「今でも、日本でプレーした当時のことは忘れられないし、いろんなことを学んだよ」。

 日米それぞれの野球を熟知するだけでなく、真面目かつ温厚な性格。近い将来、監督や指導者として日本球界に「復帰」する可能性があっても不思議ではありません。

 パウエル打撃コーチは「監督? もちろん、チャンスがあればね」とひとしきり笑った後、「将来のことは、何が起こるか分からないからね」と、一瞬だけ、真剣な表情を浮かべていました。