エンゼルス大谷翔平投手(27)が4月24日オリオールズ戦で、赤いアンダーソックスを膝まで出す「オールドスタイル」で出場。2安打2得点と結果を残しました。

アメリカ野球の歴史を振り返ると、1869年に初のプロ野球チーム、シンシナティ・レッドストッキングスが誕生。大リーグでは1876年創設以来、ユニホームの靴下が球団名にもなっています。

現在もレッドソックス、ホワイトソックス、レッズが伝統を継承。意外なところでは、タイガースも球団名の由来は靴下です。創設時の監督が濃紺地にオレンジ色のストライプが入るストッキングを着用。それがトラのしま模様を連想させたことから、「タイガース」と命名されました。ズボンを膝下まで引き上げてストッキングを見せる、いわゆる“オールドスタイル”が主流でした。

ところが、1970~80年代にユニホームの素材が変わると着こなしも変わりました。82年に当時カージナルスのジョージ・ヘンドリック外野手が細いズボンを足首まで伸ばす、まるで日本独特の股引のようなスタイルで登場。以来、ズボンを足首まで伸ばすはき方が流行し、伝統的なストッキングの存在価値が薄れつつありました。

そんな中、94年に当時ドジャースのデライノ・デシールズ二塁手が、チームの大先輩であり大リーグ初の黒人選手である「ジャッキー・ロビンソンに敬意を表する」と動きました。ストッキングを膝下まで出すスタイルで登場。ちょうど、米国ではノスタルジックなものへの回帰現象が始まっていた頃。アメリカの古き良き時代を人々が懐かしがることで「昔ながらの野球」が再発見され、“ロビンソンスタイル”が注目を浴びるようになりました。

97年8月27日にインディアンス(現ガーディアンズ)は、敵地アナハイムのエンゼルス戦で主砲ジム・トーミの27歳誕生日を祝い、選手全員が彼のトレードマークであるストッキングを出すスタイルで試合に臨みました。すると10-4で大勝。以来、チームは“トーミースタイル”で快進撃が始まり、リーグ優勝を果たしたこともあります。

2006年にはマリナーズのイチロー外野手がストッキングを出すスタイルに変更。それが日本のプロ野球選手にも大きな影響を与えました。今回、大谷がストッキングを見せるスタイルに変身したときも、エンゼルス専属のテレビ解説者マーク・グビザー氏は、“イチロースタイル”と表現していました。

ちなみに、エンゼルスは1961年の球団創設から最初の4年間は、チームカラーの1つである紺色のストッキングを着用。65年から赤いストッキングに変えましたが、紺色のラインは入っていません。そのあたり、アメリカは自由でおおらかです。今回、大谷は1試合だけで元のスタイルに戻しましたが、再び“オールドスタイル”で登場する日はあるでしょうか。「大谷ファッション」からも目が離せません。(大リーグ研究家・福島良一)

大谷翔平(2022年4月24日撮影)
大谷翔平(2022年4月24日撮影)