ヤンキース田中将大投手(27)が22日、仙台市のコボスタ宮城室内練習場で自主トレを公開した。昨年10月、右肘の骨棘(こっきょく)を除去する内視鏡手術を受けた。回復は順調で、キャッチボールに力感がみなぎった。メジャー3年目の今季を「1シーズン戦う。数字の目標はないが、納得する数字を残す」と上限なしに設定。エースの働きを「バリバリ意識する」と誓った。逆境を受け止めプラスに転じる。タフガイの真骨頂を発揮する。

 穏やかに体を動かすコボスタ室内の田中は、楽天時代と変わらないように見えた。キャッチボールで顔が変わった。65球、立ち投げした。軸を作る時間、グラブの位置、体重移動。動作と球筋の関係を丁寧に探る姿は変わりなかった。

 テンポは、明らかに変わった。メジャーリーガー特有の速いテンポが、ヤンキースで3年目を迎える歳月を物語っていた。最後の3球はややカット、力強い軌道だった。「段階を踏んできた。大丈夫だと思う。順調」。手術した右肘は問題ない。

 郷に入りては郷に従え。田中の流儀だ。「1試合いいピッチングをすればヒーロー。1試合ダメなら『肘がダメ』。受け入れるしかない。言われたくないなら、勝ち続けるしかない」。世界一厳しいといわれるニューヨークメディアの目にもまれ、悟った。「1シーズン戦わないと。健康でマウンドに上がることが第一。数字の目標はない。納得する数字を残す」から「エースに?」と問われ、返した。

 「意識を強く持って。バリバリ意識したい。現時点であえて、思っていたい。(チャプマンはじめ)後ろの3枚は屈指で、信頼できる。でも、自分は先発。彼らを頼りにゲームに入りたくない」

 名門の看板を張る。

 逆境こそ好機。13年もそうだった。WBCで結果を出せずシーズンに入った。不安を一掃する24連勝でギネスに名を刻み、楽天を日本一に導き、海を渡った。一緒に自主トレした則本と松井裕には、「味わったことのない場面を経験した。『あの経験をしたから、今がある』と思えるシーズンを送ってほしい」と伝えた。侍ジャパンの2人は昨秋、プレミア12準決勝の韓国戦、9回で辛酸をなめた。DNAを授けたからには有言実行といく。

 東日本大震災から5年を迎える。東北へ、と問われた。「もちろん、忘れてなんていない。この1、2年、いいニュースを届けられていない。少しでも届けたい」と答えた。東北が培ってくれた「たくましさ」は世界に通ずる。ヤンキースの第1先発に君臨して、証明してみせる。【宮下敬至】