プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月30日付紙面を振り返ります。2000年の1面(東京版)は、マリナーズの本拠地シアトルに到着した、イチロー外野手でした。

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 【シアトル(米ワシントン州)28日(日本時間29日)】イチローの米国上陸に警察も動いた。イチロー外野手(27)が正式契約などのため、マリナーズの本拠地シアトルに到着。空港には出迎えた報道陣約50人のほか、一般ファン数百人が殺到。シアトル市警の警官3人が出動し厳重にガードするなどパニック寸前となった。きょう29日(同30日)発売の米スポーツ・イラストレーテッド誌が5ページの特集を組むなどイチローの注目度は高まるばかり。30日(同あす12月1日)入団会見を行う。

 

 空港内を歩く旅行者のだれもが、立ち止まった。テレビカメラ5台をはじめ、50人を超える報道陣がイチローの到着を待ち構える異様な光景に、多数のシアトル市民がただならぬ興味を示した。「だれが来るんだい?」。口々に質問を投げかけ、その当事者がイチローと知ると早速、カメラを準備するファンが続出した。あまりの混乱ムードに、地元シアトル市警も即座に対応。ピストルを携帯した制服警官3人を、搭乗口に緊急配備し、異例ともいえる警備態勢でイチロー到着を待ち受けるほどだった。

 もっとも、周囲のけん騒をよそにイチロー自身はいつものように冷静だった。午後3時。フラッシュを浴びながらも、自らカメラの前に歩み寄って報道陣の質問に答えた。「今回はメディカルチェック(身体検査)がメーンになりますが、無事に終えて正式に(契約の)サインができればいいと思います」。途中、経由地のロサンゼルスで乗り継ぎ便がキャンセルになるハプニングもあったが、そんな長旅の疲れも見せず、淡々と応対した。

 今回のシアトル入りは、2日間のメディカルチェック、正式契約などの公式行事が主目的だが、その一方で新居探しのほか、銀行の口座開設、車、家具購入など新生活の手続きも兼ねている。きょう29日には、弓子夫人(34)が、シアトル市郊外の新居候補を下見。私生活面での準備も並行して進めていく予定だ。

 既に、本拠地セーフコフィールドには、佐々木やA・ロドリゲスら主力選手と並んでイチローの壁画も登場した。マリナーズショップでは早々とイチローのユニホームが販売されるなど、「イチロー熱」がフライング気味に高まり始めている。

 マ軍テッド・ヘイド環太平洋スカウトも「イチローの野球に対する姿勢は素晴らしいし、米国でもすごい人気になると思う。近い将来、米国の若い選手がみんなイチローの打撃スタイル(振り子打法)をマネするようになるかもしれない」と話すなど、周囲の期待は大。既に人気者となっている佐々木との相乗効果も期待できるだけに、来季は「JAPANブーム」が起こる可能性も高い。

 無論、イチローも長年の夢だったメジャーにかける思いは隠せない。「以前(5年前にシアトルに来た時)はお客さんという気分でしたが、今回はマリナーズの一員というところが違いますね」。正式契約後の30日(日本時間12月1日)には、米マスコミも交えてグラウンド内でお披露目会見を行う予定。イチローが、いよいよ米国での第1歩をしるすことになる。

※記録と表記は当時のもの