<マリナーズ3-5レッドソックス>◇26日(日本時間27日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)26日(日本時間27日)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(34)がレッドソックス戦で大飛球を驚異の背面キャッチで好捕。1954年のワールドシリーズ第1戦、伝説となったウィリー・メイズ(ジャイアンツ)の「ザ・キャッチ」をほうふつさせるスーパープレーで、地元ファンを陶酔させた。

 5回表、1死一塁の場面だった。7番バリテックの放った打球がバックスクリーンやや右方向へと伸びていった。右肩越しに打球を追うイチローも加速し、最後はフェンス直前の球際で絶妙の背面ジャンプを試み好捕。その直後にフェンスに激突した。

 イチロー

 力抜かなきゃとは思うもののそうできなかった感じかなあ。時間的にも余裕がなかった。

 フェンス直前の動作だけに力を抜く猶予はなかったが、それでも衝撃吸収シートが張られたフェンスに右足と右肩をぶつける2段階の受身で、頭部への衝撃を瞬時に回避。地面に落ちる時も後頭部をグラブとボールを持った右手で保護しながらの素早い返球で、走者を進塁させなかった。

 ウィリー・メイズの背面キャッチは伝説となっている。しかしフェンスまでの距離を考えると、激突を恐れてちゅうちょする気持ちが生まれても不思議ではない今回の方が、難易度は高いはずだ。

 珍しく危険を冒したプレーには前日の悔しさがあった。「アメリカの人(記者)からは『捕れたんじゃないか』みたいな空気がちょっとあったので。結構、イラっときてたんですけどね。そのストレスはあったことが一番の原動力かな」。ヤンキース戦の8回、勝ち越しとなる二塁走者の松井を刺すため、定位置より浅めに守り右中間を破られたことに、地元記者達が懐疑の目を向けてきたからだった。それだけに、走者を置いて同じ右中間に上がった打球を意地で追いすがっていった。「けがのリスクは関係なくっていう感じですね。僕らしくないですけど」。

 スーパープレーでスタンドを沸かせたが、チームは前日と同じ展開で8回に突き放されての7連敗。胸の奥に秘めた意地の守備で、3万5818人の地元ファンを魅了した。