<マリナーズ1-2タイガース>◇6日(日本時間7日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(34)の“メジャー初登板”が幻に終わった。タイガースの延長15回、登板可能な救援陣がいなくなり直訴。結局、捕手を投げさせたチームはやはり?

 敗戦。投手イチローは実現しなかった。6打数1安打で、日米通算3000本安打まで19本とした。この日発表されたオールスター(日本時間16日、ヤンキースタジアム)ファン投票ではア・リーグ外野手部門3位となり、日本時代を含め15年連続出場を決めた。

 捕手バークがマウンドに立つ「珍事」の裏側で、これまた仰天のやりとりがあった。今季最長の4時間12分、延長15回。イチローが通訳を介して、リグルマン監督に登板を直訴した。愛工大名電時代はエースで甲子園にも出場。オリックス時代にはオールスターで登板したこともある。

 イチロー

 初登板を逃した試合ですね。最初、冗談かなぁと思ったんですけどね。(バークが)本当に行ったんで。でも淡々とやりましたよね。いいですよね。ああいう感じは。

 最速87マイル(約140キロ)の直球に変化球も交え、ヒジをたたむ捕手独特の腕の振り。そんな急造投手を、右翼から見守った。さすがに甘くはなかった。先頭のカブレラに中越えの二塁打を許し、暴投と犠飛で決勝点を奪われた。右翼線のライナーを好捕して、助けたが1点が重かった。

 9回からマスクをバークに譲った城島が、日本ではあり得ない舞台裏を明かす。「これがメジャーリーグというゲーム。イチローさんも投げたかったろうし、ベルトレも皆、投げたかったと思うけど。理由がイチさんはけがが怖いからって。バークは怖ないんかっちゅう話でしょう。ベルトレも『おれがいく』って言った。お前けがされたら困るって。けがしていいんかってバークが」。

 14回までに6人の投手を使いブルペンに残っていた中継ぎ陣は、守護神モローとローズの2人。モローは最近5試合で4試合に投げる登板過多。左腕ローズは左肩の違和感を試合前に訴えていた。そこで白羽の矢が立ったのが、マイナー時代に通算4度の登板経験のあるバーク。マ軍では、野手が登板したのは8年ぶりのことだったが、それがイチローだったら、シアトルのファンも喜んだに違いない。