【シアトル(米ワシントン州)13日(日本時間14日)=木崎英夫通信員】イチローが背番号42で復帰する。胃潰瘍(かいよう)のため故障者リスト入りしていたマリナーズ・イチロー外野手(35)が、本拠地でのチーム練習に合流した。今季初戦となる15日(同16日)エンゼルス戦には1番右翼で先発出場する見通し。同日はメジャー初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンのデビュー記念日で、イチローもロビンソンの永久欠番42を付け、残り2本に迫った張本勲(元ロッテ)の通算3085安打に挑む。

 これも因縁なのかもしれない。メジャーリーグの記念日に、イチローもメモリアルヒットを狙う。復帰する15日エンゼルス戦は、黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソンのデビュー記念日。昨年までは希望する選手が全球団の永久欠番42を付けたが、今年から全選手が付ける。日米通じプロ18年目で初めて51番を背にせず、伝説の42番で、残り2本に迫った張本の日本プロ野球最多安打記録3085本、さらに記録更新にチャレンジする。

 この日、本拠地セーフコフィールドでのチーム練習に合流したイチローは、アリゾナのキャンプ地での調整の具合を物語るように終始明るい表情で動き回った。シートノックを終えた後の打撃練習では34スイングで10発のフェンス越え。守備練習では成功率100%の3度の背面捕り、そしてスーパーキャッチを頭に描いた右翼フェンスのよじ登りを2度敢行した。やっておきたいことはすべて消化した約2時間だった。

 「明日どころかミネソタ(4月6日の開幕戦)から出れたっちゅうねん」と元気いっぱい。ワカマツ監督はイチローのこの日の最終検査については「まだ見ていないが問題なさそう」と話し、復帰戦に関しては「ライトでリードオフマン(1番)」と結んだ。

 14日にも試合があり、開幕から8試合を経過しての復帰になる。メジャー史上初の9年連続200安打達成にはいきなりのハンディとなるが、イチローのとらえ方は違う。「僕が日本でやってきたことの強みっていうのが出ると思いますね。130試合の中で僕はやってきているので130プラス24という計算が僕にはできる。162マイナス8っていうふうにはとらえない僕がいるんで。まだエクストラ(余分)であるっていう感覚を常に持ってますね」。

 オリックス時代の94年に日本球界初となるシーズン200安打を122試合目に達成。この時、年間の試合数は130試合だった。単純にメジャーの年間試合数162だけを見れば失った8試合は決して小さくない。だが、130試合で成し遂げたあの時の経験は必ず生かせる。

 数字とは裏腹に測れなかったのは仲間の気持ちだった。練習前のクラブハウスでは2週間ぶりの復帰にチームメートが温かく迎えてくれた。ロッカーが隣となった新加入のマイク・スウィーニーは抱きついて言った。「キョウダイ!」。待望の復帰に加え、さらに歓待ムードを醸したのは5勝2敗でア・リーグ西地区の首位に立つチームの雰囲気だった。「なんかいい感じですね、皆。勝ってきてるっていうのはあると思いますけど。なんかこうエネルギーがある感じがいいですね」。気温8度、体感温度4度のシアトルでイチローの闘争心は熱かった。