【ワシントン25日(日本時間26日)=斎藤庸裕】ドジャース山本由伸投手(25)がメジャー2勝目を挙げた。ナショナルズ戦に先発し、6回4安打無失点7奪三振の力投。5回には顔面付近を強襲した約169キロの弾丸ライナーをスーパーキャッチした。ロバーツ監督に「死にかけた」と漏らす中でも由伸スマイルを貫き、NPB最高峰右腕が本領を発揮してきた。

   ◇   ◇   ◇

スコアボードに6つの「0」を並べ、97球を投げ終えた山本は、三塁側ベンチ前で出迎えたロバーツ監督とがっちりとハグを交わした。デビュー6戦目。「ここまでの中では、一番自分らしい投球だったかなと思います」。三塁を踏ませない危なげない投球に、ようやく合格点を付けた。

危なかったのは、5回の弾丸ライナーだった。7番ロサリオが放った打球速度104・8マイル(約169キロ)の投手返しの打球に、山本はとっさに反応した。顔面を襲う高速弾を青いグラブで捕球すると、クルリと体を反転させ、転倒することなく、笑顔で体勢を立て直した。心配そうにマウンドに向かった指揮官には「死にかけた」と笑顔でユーモアを交えて安心させた。

オリックス時代、昨季まで3年連続でゴールデングラブ賞を獲得したアスリートの反射神経に、敵地のファンからも拍手が起こった。「ビックリしましたけど、ビックリする間もなくボールが来てたんで。たまたまグラブが反応できるところだったので運が良かったです」。死にかけたとは思えない清涼感で語った。

韓国でのデビュー戦では1回5失点と炎上した。だが、その後の米国での5試合では2勝0敗、防御率2・00と着実に調子を上げてきた。「生活というか、野球も多少違いはあるので、そういった部分も徐々に慣れてきたと感じる部分もあるし、意外と気にしてなかったつもりが多少は意識をしてたのかな」。過去数試合は、米国流の高めの速球を中心とした配球から痛打されるケースが目立った。幼い頃から高めに投げる練習はしたことがなく、力んだ末にシュート回転して棒球気味になった球をはじき返されてきた。

対処法は実にシンプルだった。この日は投球の基本でもある低め主体に「原点回帰」。無理に米国流を踏襲するのではなく、日本時代に近いイメージで腕を振った。「基本はそこまで変わりはないと思います」。前回登板24%だった直球の割合を41%に増やして低く制御。スプリットで芯を外し、縦割れのカーブで目線を動かす山本本来のスタイルでアウトを重ねた。

3時間の時差がある東海岸への初遠征も苦にせず、文句なしのメジャー2勝目を挙げた。「いい力感、いいバランスで投げていけました」。心身ともに力みが抜け始めた山本が、ようやく3年連続沢村賞の感覚に近づいてきた。

◆ドジャース山本の球種割合(スタットキャストによる分類)

◇4月19日メッツ戦(99球)=スプリット38(38%)カーブ30(30%)直球24(24%)カットボール7(7%)

◇4月26日ナショナルズ戦(97球)=直球40(41%)スプリット26(27%)カーブ26(27%)カットボール5(5%)