マリナーズのイチロー外野手(37)がブレーブスとの交流戦で右前打を放ち、今季の安打数を92とした。81試合を消化し、シーズン折り返し時点での安打数はメジャー11年目で最低となった。過去10年、後半81試合の平均安打数は109・3本。史上初の11年連続年間200本安打達成はなるのか。大リーグ研究家の福島良一氏(54)に意見を聞いた。

 連続出場が255試合で途切れてから、イチローが復調しました。ただ幾重の「包囲網」の出口が、見えたわけではありません。

 (1)勤続疲労

 同連続出場の間すべてに先発し、指名打者が5試合あっただけで「1番右翼」が指定席。誰よりも打席に立ち、米球場の一般的な構造上、強い西日にさらされる右翼手は体力の消耗が激しい。しかもマリナーズは30球団でシーズン総移動距離が最も長い宿命にあり、疲労は終盤ほど抜けません。今後も適度な休養は必要でしょうが、試合数と安打数は比例するため、首脳陣は難しい判断を迫られます。

 (2)投高打低

 パワー投手全盛という潮流も逆風です。象徴するのが今季2割8厘という第1打席の不振。先発投手の立ち上がり、最も力のある球をとらえられず、球威の落ちた第3打席が4割1分9厘もあるのとは対照的。また長打16本は自己最低ペースで、タイプ的に必要なくても非力はマイナスに働きます。外野手は「異変」を察して前進守備の傾向にあり、パワーが伝わらないと強い打球を打てず、内野手も前寄りに詰めています。本来のヒットゾーンを消され、内野安打も稼げません。

 (3)ジンクス

 3年周期の「厄年」に当たります。衝撃デビューの翌02年、シーズン最多安打を塗り替えた翌05年、連続200安打の近代記録を樹立した翌08年。安打数のワースト4までに3つが入るように、偉業達成の翌年はモチベーション維持が難しいのでしょう。区切りの10年連続を終えて再出発の今年も同様です。イチローの行く手を阻む壁はこれだけ多く、時間切れの胸騒ぎを覚えてしまうのです。

 ◆福島良一(ふくしま・よしかず)1956年(昭31)10月3日、千葉県市川市生まれ。中大卒。小学6年で日米野球を初観戦し魅了されて以来、大リーグ研究に没頭する。学習院高2年の73年から毎年渡米。80年にカップ麺のCM撮影で来日したピート・ローズに、持参するのを忘れたフィリーズ帽子を貸してあげて感謝されたことが自慢。