ドジャースからFAとなった黒田博樹投手(36)がヤンキースと合意したことが13日(日本時間14日)、明らかになった。古巣・広島復帰とメジャー残留で迷い続けてきたが、最低でもあと1年は米国でプレーすることを決意した。条件は1年契約で、年俸1600万ドル(約12億円)は、このオフ契約したFA投手でも最高額となる。期待の大きさだけ結果が求められる。常勝が義務付けられる厳しい環境で、ワールドチャンピオンを目指す。

 メジャー残留を決めた黒田にとって、最終的な条件は世界一に届く可能性の高い球団だった。今月8日(同9日)、獲得意思を示していた古巣広島に断りの連絡を入れた時点で、ヤ軍入りの意思を固めた。ヤ軍の提示条件は1600万ドル(約12億円)の1年契約。米メディアでは1000万ドル(約7億5000万円)程度と報じられているが、実際には大きく上回っている。

 ただ、黒田の心を動かしたのは、金額による評価だけでなく、左腕サバシアに続く先発ローテの一角としての期待度の高さだった。このオフも広島復帰という選択肢を持っていた。また慣れ親しんだドジャース残留にも大きな魅力を感じていた。だが、二者択一に固執したわけではなく、メジャー他球団の動向にも含みを持っていた。実際、代理人のスティーブ・ヒラード氏は「広島を含め、メジャー各球団と同じように考えていく」と、あらゆる可能性を探る方針を示していた。

 このオフ、米球界での「黒田人気」は突出していた。ウィルソン、バーリーの両左腕と一線を画した右腕市場で、黒田は1番人気。オズワルト、ジャクソンら他の先発FA右腕が動けないほど、黒田の動向は注目されていた。

 そんな黒田に、破格の条件を提示したのが、ヤ軍だった。当初は、ダルビッシュ入札の最有力候補だったが、落札期限直前に首脳陣間の話し合いで、ダルビッシュではなく実績と安定感のある黒田の獲得へ方針を転換。ダルビッシュへの入札金を2000万ドル以下に控え、黒田獲得資金を算出していた。

 ESPNバスター・オルニー記者はツイッターで、ヤ軍はジャクソンとの交渉決裂後に「ハル・スタインブレナー・オーナーから特別予算で黒田を獲得していいという許可が出た」などと報じた。昨季、ド軍で202回を投げ、13勝16敗ながら防御率3・07と抜群の安定感を残した黒田は、豊富な戦力を誇るヤ軍にとっても最高の条件を提示するに足る投手だった。

 1年契約にこだわった黒田にとって、盟主ヤ軍でチャンピオンリングを狙うことが、今季の唯一にして最大の目標となった。