レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)に新人王資格がないことが30日、明らかになった。今季から適用される新労使協定で、日本、韓国、台湾のプロ野球、また世界レベルのキューバでプレーしていた23歳以上の新人王資格を剥奪する規約ができたことが、大リーグ公式サイトで分かった。これまで日本人選手では野茂、佐々木、イチローが受賞。そのたびに米国内で資格論争が起こっていたが、今季の最有力候補とみられていたダルビッシュは挑戦権さえなくなった。

 大リーグ公式サイトが「今年の有望新人トップ100」を発表したが、最上位に位置してもおかしくないダルビッシュの名前がなかった。同サイトは「今季から採用する新労使協定では、ダルビッシュを含め、海外のプロに相当するチームでプレーしていた23歳以上には新人の資格がない」と説明し、その当該国・地域として日本、韓国、台湾、キューバを明記。それは、25歳ダルビッシュに新人資格がないことを意味していた。

 数年来の懸案事項だった新人資格について、大リーグ機構と同選手会が新たな指針を打ち出したようだ。ダルビッシュはレンジャーズと6年総額6000万ドル(約45億円)の大型契約を結んだが、出来高の1つには12年新人王ボーナス5万ドル(約375万円)が含まれている。今年から外国人選手への資格制限が加わることで、新人王の最有力候補が除外される形になる。

 資格論争は幾度となく起こってきた。実績ある日本人選手がタイトルを獲得するたび、議論は活発化した。95年のドジャース野茂が発端だった。日本プロ野球78勝右腕が、メジャー1年目から13勝をマークして新人王を受賞。この時は“反対勢力”も目立たなかったが、00年佐々木、01年イチローとマリナーズ勢が2年連続で受賞すると、日本人スター選手が「新人王」を獲得するという違和感から、資格を見直すべきとの論調が強まった。

 日本人選手への逆風から“犠牲者”も出た。03年に巨人からヤンキース入りした松井だ。メジャー1年目から106打点を挙げ、地区優勝、ワールドシリーズ進出にも貢献。前評判では新人王争いの大本命だったが、個人成績のほとんどで劣っていたロイヤルズ・ベロアに僅差で及ばず、タイトルを逃した。当時のヤ軍ジョージ・スタインブレナー・オーナーは「今年の新人王投票は茶番だ」と激怒。松井の落選は物議を醸し、それ以降、外国人選手の新人王へのハードルは年々厳しさを増した。

 長年の課題に1つの答えを出した新労使協定が決定した昨年12月は、くしくもダルビッシュへの高額入札が全米で話題を集めていたころに重なる。これまで日本人選手でタイトルを受賞した野茂、佐々木、イチローはいずれも1年目の活躍を足掛かりに、メジャーで成功を収めたメンバーばかり。ダルビッシュが、その4人目に名を連ねることはできなくなった。

 ◆メジャーリーグ新人規定

 前年までメジャーで130打席以下の野手、登板50イニング以下の投手、もしくは25人選手枠に45日以上登録されていない選手が対象。昇格年数は関係なく、レギュラーシーズンの成績だけが対象。昨季まで外国人選手への制限はなかった。新人王の選出方法は記者投票で決定。全米野球記者協会が選んだ各球団本拠地から2人ずつ(ア14球団=28人、ナ16球団=32人)が投票。1~3位までを記入し、1位5点、2位3点、3位1点の合計点で争う。