アスレチックスからFAとなった松井秀喜外野手(37)のア・リーグ残留が極めて厳しくなった。松井に興味を示していたオリオールズは、デュケット編成本部長が獲得を否定し、補強候補に挙がっていたヤンキースはラウル・イバネス外野手(39=フィリーズFA)と合意。契約が決まらず、キャンプ開幕にも間に合わない可能性が高まった。大リーグ研究家の福島良一氏(55)が去就長期化を分析し、今後を予想した。

 メジャー球団が続々とキャンプインするなか、松井の移籍先はまだ見えてきません。獲得候補に挙がったヤンキースはイバネスに一本化。昨年まで所属したアスレチックスは薬物問題を抱えるマニー・ラミレス(前レイズ)の獲得が秒読み段階。この2球団が決まれば、ア・リーグDH補強はほぼ完了です。唯一、ブルージェイズが左のDHに不安がありますが、手を挙げる可能性は低いでしょう。

 DH選手への評価は年々シビアです。要因の1つに、DHに求める役割の変化があります。突出した結果を残せれば別ですが、主力野手を休ませたり、左右投手に合わせてフレキシブルに起用する球団が多くなりました。“分業制”の傾向が強まり、「これぞDH」といえる専任選手は、レッドソックスのオルティズくらいです。ベテランより若手の方が使い勝手がよく、松井より実績があるゲレロ(オリオールズFA)、デーモン(レイズFA)でもまだ行き先が決まらない現状に表れています。

 松井はここ2年の成績が振るわず、昨季の対戦成績が左投手(2割7分3厘、8本塁打)より、右投手(2割4分2厘、4本塁打)が悪かったことも去就に影響しています。この時期まで残ったFA選手の高額契約は望めません。今月14日にホワイトソックス移籍が決まった福留は100万ドル(約7500万円)で合意しましたが、昨季年俸の10分の1以下。昨季425万ドル(約3億1900万円)の松井も、メジャー最低年俸48万ドル(約3600万円)程度を受け入れるか、マイナー契約を覚悟する時期にきているかもしれません。

 ナ・リーグで代打か、外野の控えを目指すのが現実的です。可能性があるとすればドジャース。ヤンキース時代の打撃コーチ、マッティングリー監督が松井を高く評価し、外野陣も万全ではなく、状況的に出番がもっともありそうです。長距離砲が不足しているブルワーズも候補です。薬物問題の昨季MVPブラウンが開幕50試合出場停止濃厚で、大砲フィルダーもタイガースに移籍。FA市場に1発のある打者を求める可能性があります。近年は、DHで一時代を築いたジオンビ(ロッキーズ)、トーミ(フィリーズ)らもナ・リーグに流れています。ア・リーグ一筋でプレーしてきた松井にとって、メジャー10シーズン目は転機になるかもしれません。

 ◆FA市場の現状

 交渉解禁した昨年11月初旬は、300人近いFA選手であふれたが、最近はすっかり減った。スポーツ専門局ESPN電子版が19日現在「去就未定」に登録するのは松井を含め27人。06年サイ・ヤング賞の先発右腕ウェブ(レンジャーズFA)らケガで再起が危ぶまれたり、バリテック捕手、ドルー外野手(ともにRソックスFA)ら引退をにおわせる選手を除けば、「就活中」とみられるのは15人前後。ただメジャー契約を勝ち取れそうなのはオズワルト(フィリーズFA)くらいで、将来の殿堂入り確実なロドリゲス捕手(ナショナルズFA)、07年の首位打者オルドネス(タイガースFA)らも苦戦中だ。