<ヤンキース4-5オリオールズ>◇7月30日(日本時間同31日)◇ヤンキースタジアム

 ヤンキースのイチロー外野手(38)が、ピンストライプを着て初めてのホームランを放った。移籍後7戦連続安打をマークした今季5号は、メジャー通算100本塁打となる節目のアーチだったが、9回に迎えた一打同点のチャンスに凡打。チームは3連敗を喫し、素直に喜べない1発となってしまった。

 7回2死走者なし。チャベスが2点差に詰め寄る9号ソロ弾を放った直後だった。オリオールズ先発ゴンザレスの5球目内角高め速球を強振。大きな打球が右翼2階席最前列で大きく跳ねると、約4万3000人の本拠地ファンが大歓声をあげた。ファンの反応の大きさに「ちょっと戸惑った」と驚いた様子だったが、「恥ずかしいわ、100って。2年で打つ人もいますから」と話した。

 手放しで喜べない原因は、1点を追う9回1死一、二塁の同点機に遊ゴロに倒れたことだ。二塁封殺で2死一、三塁となった後、二盗に成功したが、次打者は空振り三振。せっかくの追い上げムードを生かし切れず、「最後ですね、最後が悔しいですね」と話す声は、自然とトーンが下がった。

 モチベーションを個人記録に向けるしかなかったマリナーズ時代から一変、ペナントレース真っただ中のヤ軍ではチームの勝利がすべて。勝利に手が届く位置にありながら、みすみす凡打してしまった悔しさが、通算100号の喜びをかき消した。「なるべく(ファンに)冷められないようにしないと」。勝つという目標は、勝負の大前提。だが、当たり前のことに集中できることが、新たな刺激となっている。(佐藤直子通信員)