<オールスター:ア・リーグ5-3ナ・リーグ>◇15日(日本時間16日)◇ターゲットフィールド

 【ミネアポリス(米ミネソタ州)=四竈衛】メジャーのオールスターゲームに3度目の選出となったレンジャーズのダルビッシュ有投手(27)は、今球宴で「最遅」となる56マイル(約90キロ)の超スローカーブで観客を沸かせた。ア・リーグの3番手で3回に登板し、1回無安打無失点1奪三振だった。

 球宴に詰め掛けたファンを喜ばせたい-。大胆さと遊び心にあふれた、ダルビッシュらしい、初登板だった。3回表1死。今季メジャートップ、打率3割4分5厘のトロウィツキーに対し、150キロに迫る速球で追い込んだ後、4球目は両軍21投手が投げた全268球中、最も遅い56マイル(約90キロ)の超スローカーブを投じた。人を食ったような1球に満員の観客がどよめき、その直後、球場内が和んだ。「(シーズン中も)ちょいちょい投げてますが、ファンの人たちが喜ぶ球なので、今日見せることができて良かったです」。

 計画的な1球だった。速球投手にとって、遅い球を投げるには、他の球種より勇気が必要といわれる。だからこそ、周到に手を打った。3回。マウンドに上がると、初めてコンビを組む捕手ペレスとサイン確認を行い、さらに耳打ちした。「カーブは持ち味のひとつ。1球ぐらいは投げたい、と言いました」。

 トロウィツキーといえども、あまりの遅さに、バットが出せず、ただ見送るしかなかった。「あんなカーブは予想もしていなかった。三振にならなくて良かったよ」。結果は内角高めを外れ、ボールとなったが、最後はスライダーで左直に打ち取った。昨季に本塁打、打点の2冠に輝いたゴールドシュミットは速球で押して二直。キューバの暴れ馬といわれるプイグは見逃し三振で、強打者3人を緩急自在の投球で片付けた。

 「(バックに)ジーターもそうですし、カノ、トラウトが守ってくれて、変な感じがしましたが、楽しかったです」と振り返った。レ軍は地区最下位に沈み、後半戦も厳しい戦いは続く。「ことしは満足のいく投球がなかなかできていない。何で(選ばれたの)かな、と」と正直に話したことがあった。だが、持ち味を詰め込み、観客を引き込んだ14球を見れば、選手間投票で選ばれた理由がよく分かる。