<ワールドシリーズ:フィリーズ5-8ヤンキース>◇第3戦◇10月31日(日本時間11月1日)◇シチズンズバンクパーク

 【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=大塚仁】ヤンキース松井秀喜外野手(35)がフィリーズとのワールドシリーズ第3戦で2試合連続本塁打を放った。指名打者制のない敵地ではスタメンから外れたが、7-4で迎えた8回表に、代打で左翼へダメ押しのソロアーチをかけた。ヤ軍は3点を先行されながら、4回表にアレックス・ロドリゲス内野手(34)の一打が、Wシリーズ初のビデオ判定で本塁打に覆り、反撃開始し、5回に逆転した。対戦成績はヤ軍の2勝1敗となった。

 シチズンズバンク・パークに初めて松井の名前がコールされたとき、時計は日付の変わった午前0時6分を指していた。そして2分後には祝福とともにベンチに迎えられた。8回2死に飛び出した2試合連続アーチは、リードを4点に広げる代打ダメ押し弾。1度しかない出番で貴重な仕事をした男は「思ったより飛距離が出た。スイングといいポイントといい、いろんなものがそろってあそこまで飛んだんでしょう」とヤ軍史上8度目のワールドシリーズ代打弾を喜んだ。

 マイヤーズの92マイル(約148キロ)外角速球をとらえ今季初めて左方向へアーチを描いた。ポストシーズンの左方向アーチは05年地区シリーズ第3戦以来。珍しい放物線だが「自分としては逆方向に打ったっていう感覚じゃない。振り遅れて芯に当たって、結果的に向こうに行ったという感じ。もともとああやって逆方向に距離が出るタイプではない」と振り返る。打球の方向は違っても、変わらない本来のスイングが飛距離を372フィート(約113メートル)まで伸ばした。

 メジャー7年目、ポストシーズン53試合目で初めてスタメンを外れた。長い待ち時間は、降雨による1時間20分の開始遅れでさらに延びた。しかし「大事な試合こそ普段通り」がモットーの松井は動じない。「普段もDHだから。1打席目を迎えるまでに時間があるだけで大きな違いはない。見ながらヤンキースを応援しているだけですよ」。今季の代打成績は22打数9安打、打率4割9厘。好成績はメンタルを長時間コントロールできる落ち着きぶりと無縁でなかった。

 過去1勝1敗から第3戦に勝ったチームは53チーム中66%の35チームが世界一に輝いている。第2戦の決勝アーチ、第3戦の代打アーチと2勝への松井の貢献度は大きい。「あと2勝するためには1勝しなくてはいけない。明日しっかり戦うことです」。3試合で7打数4安打、打率5割7分1厘。スウィシャーの復活もあり外野守備が実現する可能性はまた低くなったが、待望論はさらに大きくなるに違いない。ハロウィーンの夜が終わり、11月となった直後に放った松井のアーチは「ミスター・ノーベンバー」襲名への第1歩となるかもしれない。