<ワールドシリーズ:フィリーズ5-8ヤンキース>◇第3戦◇10月31日(日本時間11月1日)◇シチズンズバンクパーク

 ヤンキースは3点を先行されながら、4回表にアレックス・ロドリゲス内野手(34)の一打が、Wシリーズ初のビデオ判定で本塁打に覆り、反撃開始し、5回に逆転した。

 「文明の利器」が、試合の流れを変えた。0-3とフ軍リードで迎えた4回表1死一塁。ヤ軍ロドリゲスの放ったライナーが、右翼を襲った。打球はフェンス際で跳ね返り、グラウンド上で転がった。右翼線審ネルソン氏はインプレーと判断し、当初は二塁打となった。だが、ヤ軍ジラルディ監督の抗議を受け、審判団6人が協議。Wシリーズ初のビデオ判定となった結果、本塁打に覆った。

 リプレーの画像によると、打球はWシリーズ用の特設テレビカメラに直撃。仮にカメラがなかった場合、フェンスを越えていたかは微妙だったが、審判団は「行司差し違え」を承知で、本塁打と認定した。試合後、ネルソン氏は「何か固いものに当たった。だからリプレー使用を決めた」と経緯を説明。さらに、責任審判のデービス氏は「我々にカメラの動きはコントロールできない。特別ルールとして、カメラに当たった場合は本塁打になる」と、毅然(きぜん)とした態度で判定基準を補足した。

 打ったAロッドは打球の到達点を「見えなかった」と話したが、結果Wシリーズ初アーチ。第2戦まで8打数無安打6三振と不調だった4番のひと振りで、ヤ軍は1点差に詰め寄り、追撃ムードが整った。そもそも、ビデオ判定の論議を呼んだのもAロッドの一打で、昨年8月28日に導入された直後の9月3日、「第1号」となったのもAロッドだった。

 この一打を機に、ヤ軍は5イニング連続得点でフ軍に逆転勝ち。「大きな1本だったね」(Aロッド)。不振の4番が復調し、敵地初戦をものにしたヤ軍にとって、シリーズの行方を左右しかねない、ビデオ判定だった。【四竈衛】