広島の大瀬良大地投手(23)が「黒田ツーシーム」を試投し、周囲を仰天させた。3日、休日を返上してマツダスタジアムで練習。キャンプ終盤に黒田博樹投手(40)から伝授されたツーシームを投げ、覚えたばかりとは思えない球筋に、“師匠”の黒田からも驚きの声が上がった。昨秋からスプリットを習得中だが、メジャー仕込みの新球習得にも意欲を見せる。

 試投にもかかわらず、周囲がざわついた。大瀬良が投球間のキャッチボールで投じた球は、捕手役の畝投手コーチの前で変化した。「ツーシームを投げる感覚が分からなかったけど、黒田さんに教えてもらったら動いた」。球を受けた畝コーチが「ええじゃないか」とうなると、練習中の黒田が左打者役を務めた。黒田は「抜けると怖いから左に立った」と笑ったが、3球見届けた大瀬良の球筋に「いいツーシームを投げていた」と飲み込みの早さに驚いた。

 沖縄キャンプ中の3月1日。練習試合メンバーから外れてトレーナー室にいた黒田にアドバイスを求めた。「勝負球がスライダーとカットボールしかないので、シュート系の球がほしかった」(大瀬良)。ツーシームは以前、前田にも教えてもらったことがある。「ほぼほぼ真っすぐの感覚で投げる」というイメージは共通していた。ただ、人さし指の力が強く、習得中のスプリットも縫い目から離す右腕にとっては、黒田の「最後の最後に人さし指をちょっとかけるイメージ」に大きなヒントがあった。

 伝授されたばかりで、まだ試投段階。今日4日に登板するシート打撃では、ツーシームは封印する。まずは昨秋から取り組むスプリットの習得を最優先に考える。それでも引き続きキャッチボールなどで試投しながら「シーズン中に使えるようになれば」と、黒田ツーシーム習得にも意欲を見せた。

 宝刀を授かっただけでなく、練習後にはヤンキース時代のウエアもプレゼントされた。「球場では着られませんが、寮で着たいと思います」。大先輩から2つの贈り物を手に、満面の笑みを浮かべた。【前原淳】