これぞ先輩の威厳!! 阪神藤浪晋太郎投手(20)が、オープン戦の西武戦に中継ぎ登板し、大阪桐蔭時代に甲子園春夏連覇バッテリーを組んだ森とのプロ初対決に完勝した。3球連続で自己最速タイ157キロを投じ、1学年下の後輩を左飛に打ち取った。3回を3奪三振で2安打無四球無失点。開幕第3戦の3月29日中日戦(京セラドーム大阪)へ、調整は順調そのものだ。

 マウンドを蹴りあげた右足が高く跳ね上がり、一塁方向へ左回転する。フィニッシュの形がブレるほど藤浪は腕を振った。2イニング目の7回1死、甲子園で森とプロ初対決だ。157、157、157!! 自己最速タイを3連発。最後はバットが悲鳴を上げるようにカンッと響き、力ない飛球が左翼線に上がった。

 藤浪 全球ストレートは梅さん(梅野)の計らいかなと。真っすぐで押そうとしっかり腕を振りました。打たれたら何を言われるか分からないんで(笑い)

 初球、ボール気味の内角153キロで豪快な空振りを奪う。続けて空振りを奪った低め直球が157キロを計測すると聖地がドッと沸く。内角低め157キロでファウルを奪い、4球目は157キロで左飛。ベンチに戻る森とマウンド付近ですれ違い「球、速いわ」と声をかけられニヤリ。「なんか言っていたけど聞こえませんでした」と笑い飛ばした。

 昨年12月、冗談交じりで「対戦したくない。打たれているイメージが強いので」と後輩との初対決を“拒否”した。実際、高校3年夏に大阪大会前のシート打撃で打ち込まれていた。試合前に高校先輩の中村、浅村にあいさつするため同校OB岩田と西武ベンチへ。すぐさま駆けつけた森からは「今日、投げるんやろ?」とタメ口をかまされた。

 敬語を使う必要がないほど仲がいい関係だが、グラウンドでは負けられない。完勝で先輩の威厳を保った後「スイング自体がすごく強い。しっかり頑張ってほしい」と気遣った。

 6回からの3イニングを無失点。3月上旬の自己最速タイ計測は必然だ。オフに90キロだった体重を2キロ前後増やした。1月には自主トレを共にした広島前田から脱力投法を教わった。「脱力+パワーアップ」で着実に進化している。

 藤浪 今まで10割の力で投げていたボールを8割で投げられれば、それが脱力につながる。

 次回は10日に侍ジャパンの欧州代表戦で中継ぎ2回を投げる予定。変則調整を挟み、開幕第3戦の29日中日戦に向かう。【佐井陽介】

 ◆藤浪と森の歩み 大阪桐蔭時代はバッテリーを組み、12年に甲子園で史上7校目の春夏連覇を達成。国体でも優勝した。藤浪は同年ドラフト1位で阪神入団。いきなり先発ローテーション入りし13年は10勝、14年は11勝を挙げた。森は13年に春夏甲子園で3回戦敗退。同年ドラフト1位で西武に入団した。14年序盤は2軍だったが、7月に1軍昇格。8月14~16日、2リーグ制後の高卒新人では46年ぶり2人目となるプロ1号からの3試合連続本塁打を放った。