今秋ドラフト1位候補の富士大・多和田真三郎投手(3年=中部商)が9日、沖縄・嘉手納球場で行われた法大との練習試合で約4カ月ぶりに実戦登板した。1回2/3を投げ、2安打無失点。力を抜きながらも最速147キロをマークし、ネット裏の2球団4人のスカウトをうならせた。

 ブルルル、と音を立てて米軍機がすぐそばを通っていく。中学校の時に投げたことのある地元の球場で、多和田の今季初登板がまわってきた。5回裏1死一、三塁。ピンチでも表情を変えずにマウンドに上がった。1球目は外角直球。そこから6球連続でストレートを投げ込んで、空振り三振を奪う。続く打者にもストレートだけ。この日最速の147キロのボールで、左飛に打ち取り、切り抜けた。6回裏はフォーク、カーブを交えながら2安打無失点でまとめた。「いい感じだった」。シンプルな言葉に、自信がこもっていた。

 「初めて(の登板)だったので、力を入れすぎず感触を確かめた」と、1球1球丁寧に投げ込んだ。マウンドに右膝がすれるほど重心の低いフォーム。柔らかくしなやかな腕の振り。地からはい上がってくるようなボール。程よく力を抜くからこそ、本来の良さが生きていた。バッテリーを組む小林遼捕手(1年=仙台育英)も「力まないけど、ボールは手元で伸びてきた。あのぐらいの力加減がいい」と振り返った。

 昨年秋の神宮大会での苦い経験が糧になっている。初戦創価大戦で先発し、4回途中6安打6四死球7失点。「勝ちたいと気持ちが入りすぎた」。100%の力で投げ自己最速の152キロを出したが、その代わりに制球力を失い、上ずった球をとらえられた。「スピードじゃない」。自分の良さは、ボールのキレだとあらためて気付いた。以来、このオフはフォームを一から見直し、キレにこだわり投げ込んできた。

 こなれた多和田の投球にネット裏のスカウトも絶賛した。ロッテ永野スカウトは「課題を持って投げているのが分かる。ストレートはやっぱりいい」と納得の表情。楽天の上岡スカウトマネジャーは「ものが違う。立ち姿もいいし、貫禄がある。プロに入ってすぐにローテに入れるピッチャーだよ」とほめまくった。

 多和田は「ラスト(最終年)なんでがんばろう、という気持ちがある」と言い「ストレートの精度をもっと上げないと。少しずつ上げていけばいいかな」。自分らしく、肩の力を抜きながら、大学日本一と、ドラフト1位、2つの目標へ歩んでいく。【高場泉穂】

 ◆多和田真三郎(たわた・しんさぶろう)1993年4月13日、沖縄県中城村生まれ。中部商では1年秋からベンチ入りし、3年夏の沖縄大会準優勝。富士大では1年春からリーグ戦に登板し、通算26勝8敗。1年秋の神宮大会・国際武道大戦でノーヒットノーランを達成。182センチ、81キロ。右投げ右打ち。