希望をつないだ。願いを背負い、日本ハム鍵谷陽平投手(24)が窮地に光を差し込んだ。1点差に迫られた8回。4番手クロッタがソロを浴び、うつろげにマウンドからベンチに戻ってきた。すれ違いざまに尻をポンとたたかれ、思いを受け取った。「いつもクロちゃんには助けられているので、今度は僕が」。1死一、二塁。故郷に集まった4万1138観衆の大声援の後押しを受け、勝負に向かった。

 魂がボールに乗り移った。直球の球速は1球ずつ上がった。最速は150キロに到達した。「あの場面を想定しながら準備していた」。何度も描いていた舞台。勢い十分に百戦錬磨のベテラン松井稼を二ゴロ、続く後藤は空振り三振に仕留めた。勇ましく跳びはね、ほえた。手放しかけた流れを、引き留めた。「気持ち入りました。でも、思ったよりも落ち着いて投げられたので良かった」。ベンチでは、緊急降板した大谷が見つめていた。勝利への祈りを受けて、戦い抜いた。

 退路を断って、突き進んできた。プロ3年目の今季から、札幌市内で1人暮らしを始めた。2軍本拠地のある関東圏も検討していたが、覚悟が決断させた。「体も調子良いですし、ちゃんと自分のパフォーマンスが出来れば結果になる」。昨季のCSファイナルステージで、初勝利を挙げる好投を見せた。オープン戦でも勢いそのままに好投を続けこの日、「勝利の方程式」の一角を任された。「ファイターズらしく勝てたのは良かった」。確かな手応えが、本物だと証明した。チームの今季初白星の輝きに、たくましく花を添えた。【田中彩友美】