阪神西岡剛内野手(30)が激痛をものともしない勝負強さを見せつけた。仲間が必死に築いたチャンスなのだ。3点を追う8回だった。2死走者なしから鳥谷、上本の連打で一、二塁になった。2球目だ。フルスイングした打球が右膝内側を直撃し、そのまま崩れ落ちた。顔をしかめるが、駆け寄るトレーナーを制して再び打席へ。自打球など関係なかった。

 「(自打球は)大丈夫、大丈夫。チームとして開幕戦に何とかして勝ちたい。チームのためという思いが強かったですからね。キレイなヒットではなかったけど、気持ちで打ちました」

 さらに直球を打ち損じてファウルになった直後、低めに落ちるスライダーを巧みにすくい上げた。ハーフライナーは右前にはずむ。主軸らしい今季初安打&初適時打だった。1番鳥谷、2番上本、3番西岡は和田監督肝いりの超攻撃型オーダーだ。「1、2番が打って、僕がつなぐとああいう展開になると僕自身、感じた」。今季初戦で、その威力を鮮やかに見せつけた。

 ゴメスの適時打で一塁から一気に生還。激痛を押して鋭いピッチで同点のホームを踏んだ。それでも9回守備から大事をとって交代。アイシング治療などを施した。和田監督が「モロに当たっていたな…」と心配すれば、平田ヘッドコーチも「明日にならないと分からない」と話す。周囲の不安をよそに、帰路は笑顔も見せた。オープン戦は不調だったが、本番での変わり身は際立つ。勝つために身を削る。今季初陣から、勝負師が、もっとも大切な心を体現した。【酒井俊作】